性器クラミジア感染症は,性行為を介したクラミジア・トラコマティスによる感染症であり,性感染症としては国内外で最も罹患者数が多いとされている。無症候性感染の頻度が高く,診断されないまま経過することで女性の妊孕能に影響する。
男性では排尿時痛,尿道痛,尿道瘙痒感,漿液性排膿,女性では帯下の増加,下腹部痛などの症状で受診した場合に検査を提出する。ただし,無症候性感染が高頻度であり,妊婦健診は診断の機会となる。男性で淋菌が検出されない尿道炎である非淋菌性尿道炎では,クラミジア・トラコマティスが原因微生物となる確率は最も高く,クラミジア・トラコマティスについでマイコプラズマ・ジェニタリウムとなる。女性では,クラミジア・トラコマティスが原因微生物となる確率が最も高い。
クラミジア・トラコマティスには安定した耐性菌は存在しないと考えられるので,推奨される治療法が有効である。淋菌感染症に,3割程度でクラミジア・トラコマティスの混合感染がありうる。
有症状で,もしくは,無症候性感染として受診し,性器クラミジア感染症と診断された後は,マクロライド系抗菌薬,テトラサイクリン系抗菌薬,キノロン系抗菌薬のうち,クラミジア・トラコマティスに抗菌力を有する薬剤を処方する。マクロライド系抗菌薬の中ではアジスロマイシンとクラリスロマイシン,テトラサイクリン系抗菌薬の中ではミノサイクリンとドキシサイクリン,キノロン系抗菌薬の中ではレボフロキサシン,トスフロキサシンとシタフロキサシンが抗菌力を有している。
男性では,淋菌感染症にクラミジア・トラコマティス感染が合併することがあるが,淋菌は多剤耐性化が進んでおり,現状ではセフトリアキソンのみが有効となっている。したがって,淋菌とクラミジア・トラコマティスに同時に有効な抗菌薬は存在していない。また,非淋菌性尿道炎でクラミジア・トラコマティスについで多く検出されるマイコプラズマ・ジェニタリウムは,当初はアジスロマイシンが有効であり,クラミジア・トラコマティスと同時治療が可能であったが,近年ではマクロライド耐性が進んでおり,シタフロキサシン,もしくはテトラサイクリン系抗菌薬とシタフロキサシンの組み合わせによる治療が必要となっており,こちらも同時治療が有効ではなくなってきている。
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