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【識者の眼】「在宅医療の新しい形」小倉和也

小倉和也 (NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク共同代表、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)

登録日: 2024-10-04

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少子高齢化が日本よりも早いスピードで進む台湾では、ICTやオンライン診療を活用した在宅医療の新しい形の追求が進み始めている。

地域医療を支える医療・介護・市民全国ネットワークは、2020年に台湾在宅医療学会と協力協定を結び、2023年の日本在宅医療連合学会新潟大会において同学会と三者が協力してオンライン診療を活用した在宅におけるハイブリッドケアを推進することを謳った新潟宣言を発表した1)

その後台湾では、感染症など急性期の治療でもオンライン診療を活用し在宅で効果的に治療を行う在宅入院(Hospital-at-Home)のパイロット事業を開始した。頼清徳総統も参加したセレモニーでは、これを国策として進めることが宣言されたと言い、力の入れようがうかがえる。

先日ICTやオンライン診療について、台湾の政府機関やモデル事業を計画している自治体などで講演する機会を得たが、その際も医療介護関係者および行政関係者の熱意がひしひしと伝わってきた。介護保険制度もこれから整備を予定し、日本から学びたいという強い意欲を見せながら、必要なことはすぐに具体化しようという決断と実行の速さに圧倒される思いだった。

一足早く少子高齢化に直面している日本では、既に高齢化のピークを迎えつつある中でも、10年近く前に行われた実証事業で検討された構想がいまだ検討過程にあるなど、準備したまま事態が収束するのを待つかのような対応の緩やかさが感じられる。台湾との交流を続ける中で、日本の在宅ケアの歴史を参考にしつつ、新しいことを早く進める台湾から学ぶことも多い。

在宅ケアの経験の長い日本と急速に変化する台湾とで、お互いの長所や短所を念頭におきながら、今後も学び合い高めあう関係を続けていきたい。

【文献】

1)Yang CC, et al:Geriatr Gerontol Int. 2024;24(1):180-2.

小倉和也(NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク共同代表、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)[ハイブリッドケアv][在宅入院][新潟宣言]

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