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細菌性赤痢[私の治療]

No.5242 (2024年10月12日発行) P.43

堀野哲也 (東京慈恵会医科大学感染制御科教授)

登録日: 2024-10-11

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  • 細菌性赤痢は赤痢菌による腸管感染症で,ヒトからヒトへの直接感染,あるいは汚染された食物や水などを介して経口感染する。感染症法で3類感染症に分類されており,便から赤痢菌が分離され,細菌性赤痢による有症状者や無症状病原体保有者を診断した医師,あるいは死亡者を検案した医師は,直ちに最寄りの保健所に届け出る。

    ▶診断のポイント

    赤痢菌はShigella dysenteriae,S. flexneri,S. boydii,S. sonneiの4菌種があり,国内発生の細菌性赤痢はS. sonneiによるものが多く,症状の軽いことが多い。便培養からこれらの細菌が分離されることで確定診断となるため,症状や喫食歴,生活歴などから細菌性赤痢が疑われる場合には,感染を拡大させないためにも積極的に便培養を提出し,診断する。

    【症状】

    感染後1~5日間の潜伏期間を経て,倦怠感,発熱,下痢などで発症し,腹痛やしぶり腹,血便を伴うこともある。

    【感染の契機】

    海外での感染,特にアジアでの感染事例が多く,国内の感染では保育園でのアウトブレイクや性感染症として感染が拡大した事例も報告されており,喫食歴だけでなく,海外渡航歴や同様の症状がある人との接触の有無についても確認する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    • 多くの症例は自然に軽快するため,症状や喫食歴からサルモネラ腸炎やカンピロバクター腸炎などとの鑑別が困難な軽症例では,スポーツ飲料などの水分摂取を勧め,便培養の結果が判明するまでは抗菌薬を投与せずに経過観察とする。
    • 嘔吐などにより経口摂取が困難な症例や脱水が著明な症例では経静脈的に補液を行い,免疫能低下患者,菌血症の患者や入院が必要な患者では抗菌薬を投与する。
    • 便培養により細菌性赤痢と診断した後は,抗菌薬により有症状期間が1~2日間短縮し,便からの排泄期間も短縮するため,特に食品取扱者,高齢者施設の利用者や勤務者,児童保育者などアウトブレイクのリスクがある症例では,症状が軽微あるいは無症状であっても抗菌薬を投与する。
    • アウトブレイクが発生している居住施設の利用者では,軽症であっても便培養を提出するとともに抗菌薬投与を検討する。
    • 止痢薬は腸管拡張や穿孔を助長させる可能性があるため,投与しない。

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