マールブルグ病は,マールブルグウイルスによる重篤な感染症で,日本では1類感染症に指定されています。潜伏期間は約3~10日で,初期症状は発熱,頭痛,筋肉痛,皮膚発疹,咽頭炎などです。重症化すると,下痢や消化管出血がみられ,エボラ出血熱に似た症状を示します。ウイルスの感染は,感染者の血液や体液,排泄物,または性的接触を介して広がります。現在,特異的なワクチンや抗ウイルス薬は存在せず,治療は主に支持療法や対症療法に依存しています。日本国内ではこれまで報告例はありません。
2024年9月27日,ルワンダ保健省はマールブルグ病の発生を発表しました。10月8日時点で,ルワンダ保健省によると,12人の死者を含む56人の感染者が確認されています。報告された症例の70%以上は首都キガリの医療従事者です。症例は国内の7地区で確認されており,約300人が接触者として追跡されていますが,接触者の中で症状を呈した者はおらず,観察期間も終了しています。しかし,引き続き接触者の調査は継続中です。また,感染の発生源や地理的な広がり,追加の疫学情報も調査されています。
ルワンダでのマールブルグ病の報告はこれが初めてですが,近隣のコンゴ民主共和国,ウガンダ,タンザニアなどでは過去にも報告例があります。特に2023年には赤道ギニアとタンザニアで流行が発生しました。また,アンゴラやケニアなどの他のアフリカ諸国でも過去に報告がありました。
ルワンダ政府と保健省は迅速に対応しました。具体的には,症例の早期発見を目的とした連絡窓口の公開,積極的な疫学調査と接触者追跡,疑い症例の隔離措置が含まれます。また,全医療施設で感染予防管理や水の衛生対策が強化され,リスクコミュニケーションも実施されました。WHOは検体輸送,検査キットや個人用保護具の供給,ワクチンや治療薬に関する情報提供を支援しています。
9月30日時点でのWHOのリスク評価は,以下になっています。
26例の確定例が確認され,うち70%以上が医療従事者。院内感染によるさらなる感染拡大の懸念あり。
コンゴ民主共和国,タンザニア,ウガンダとの国境に位置する地区で症例報告あり。首都に国際空港あり,東アフリカ近隣諸国への道路網あり。
接触者1例にベルギーへの旅行歴があったが,発症はなく,健康観察期間を終了している。
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マールブルグ病はエボラ出血熱のように死亡率の高い感染症で,今回はルワンダの首都を中心に発生しているため,今後も感染拡大に注意が必要です。
【文献】
1)国立感染症研究所:マールブルグ病とは.(2024年10月2日アクセス)
2)WHO:Marburg virus disease – Rwanda.(2024年10月2日アクセス)
3)ルワンダ保健省:Rwanda Launches Vaccination Campaign Against Marburg Virus.(2024年10月10日アクセス)