外反母趾とは,母趾MTP関節で母趾が外反している状態である。立位足部背底像において外反母趾角〔第1基節骨骨軸と第1中足骨骨軸のなす角(hallux valgus angle:HVA)〕が20°以上と定義される。わが国での有病率は約30%であり,日常診療において遭遇する機会の多い運動器疾患のひとつである。整容面の問題だけの場合もあるが,症状の訴えは多彩である。高齢者の場合,外反母趾を有することが転倒のリスクとなるので注意を要する。外反母趾の発症の危険因子として,内的因子と外的因子がある。内的因子には遺伝,加齢,性別,関節弛緩,神経筋疾患などがある。一方,外的因子には靴,体重の増加などが挙げられている。また,外反母趾と膝痛には関連性があることがわかっている。
どのような症状で困っているのかをよく聴取する。痛みの有無,痛みの種類と出現時の状況(安静時痛の有無,運動時痛の有無,靴装着時痛の有無等),仕事の種類(立ち仕事,デスクワーク等),仕事時や普段よく履く靴の種類を尋ねる。
立位での足部アライメント,母趾と第2〜5趾の変形の有無,胼胝形成の有無等の皮膚の状態を足背側と足底側からよく観察する。圧痛点,知覚異常の有無,母趾MTP関節とIP関節可動域,外反母趾が徒手矯正可能か否か,足趾の開排,屈曲が可能か否か等を確認する。扁平足がある場合は,扁平足の症状も確認しておく。
立位足部背底像と側面像を撮影する。背底像では,HVA(軽度:20~30°,中等度:30〜40°,重度:40°以上),第1,2中足骨角〔第1中足骨骨軸と第2中足骨骨軸のなす角(M1M2角)〕,種子骨の外側偏位,リスフラン関節症の有無を評価する。また側面像では,Meary角(距骨第1中足骨角),calcaneal pitch(踵骨下縁と踵骨-第1中足骨骨頭線のなす角)等で扁平足の評価を行う。
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