伝染性単核球症は,主にウイルス感染によって引き起こされる症候群である。通常,ウイルスへの曝露後4~6週間で発症する。発熱,咽頭痛,全身性リンパ節腫脹(特に頸部),肝脾腫が典型的であるが,稀に肝炎や脾臓破裂,脳炎などの合併症が起こる場合がある。発熱は軽度なことが多く,2週間程度〜1カ月以上続くこともある。発症から2週間は頸部リンパ節腫脹と咽頭炎が最も目立つ。脾腫は発症2〜3週で最もみられる。
検査所見では,白血球増多と末梢血に異型リンパ球が出現することが特徴的である。ヘルペスウイルス属のEpstein-Barrウイルス(EBV)が最も一般的な原因ウイルスであるが,サイトメガロウイルス(CMV)感染症やヒト免疫不全ウイルス(HIV)の急性感染症も同様の症候群を呈することが知られており,臨床情報のみで鑑別することは困難である。EBVによる伝染性単核球症は唾液を介して感染するため,しばしばkissing diseaseと呼ばれる。血液曝露や性的接触によっても感染することがある。届出疾患になっていないため,正確な罹患数は不明である。思春期や若年成人での発症が目立つ傾向にはあるが,どの年齢でも発症する可能性がある。
診断には,症状の臨床的評価と身体診察が必要である。思春期~若年青年期の患者で発熱,咽頭痛,倦怠感を訴え,リンパ節腫脹,咽頭炎が認められる場合には伝染性単核球症も鑑別疾患に挙げる。原因微生物の確認のためには血液検査(VCA-IgG,VCA-IgM,EBNA抗体,CMV-IgM,CMV-IgG)が重要である。病歴からHIV感染症が否定できないようであれば,HIV感染症の検索も実施する必要がある。しかし,急性HIV感染症は,HIV抗原抗体検査(スクリーニング検査)では偽陰性になる可能性があるため,HIVのRT-PCR検査を行うことが重要である。
治療にあたってA群溶連菌などの細菌性の急性扁桃炎を除外することが重要である。39℃以上の咳を伴わない発熱,強い咽頭痛,前頸部リンパ節腫脹,扁桃の白苔などの細菌性の急性扁桃炎を疑う場合には,A群β溶連菌迅速抗原検査を考慮する。特に,細菌性の急性扁桃炎では後頸部リンパ節は一般に腫大しないため,後頸部リンパ節腫脹があれば,どちらかというと伝染性単核球症を疑う根拠になる。
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