2024年の医療機関の倒産件数は2009年の52件を大きく上回り過去最多の64件となったことが1月22日、帝国データバンクの調べで分かった。休廃業・解散も722件で過去最多を更新した。倒産増加の背景には、コロナ禍以降の受診者の選別意識の高まりや材料費・人件費の増大などがあるとみられている。
倒産件数64件の内訳は、「病院」6件、「診療所」(一般診療所)31件、「歯科医院」(歯科診療所)27件。64件のうち62件は破産手続、2件(いずれも病院)は民事再生手続が取られている。
新型コロナ感染拡大が始まった2020年の倒産件数は事業者支援などを背景に27件に抑えられたが、2021年33件、2022年41件、2023年41件と徐々に増え、2024年に激増する格好となった(図)。
64件の負債総額は282億4200万円。医療脱毛クリニック「アリシアクリニック」を全国展開していた医療法人社団美実会の72億9500万円が最大の負債額となっている。
倒産の主因は6割超が「収入の減少」。倒産急増の背景について帝国データバンクは「施設・サービス面を考慮した受診者の選別意識の高まりやコロナ関連補助金の削減、材料費・人件費の増大、コロナ関連融資の返済開始などがある」と分析している。
同社はさらに、「受診者が減り、資金余力がなくなった施設はサービス品質が低下し、さらなる受診者の減少を招くという負のスパイラルに陥る」とし、2025年も倒産件数は高水準で推移するとの見方を示している。
休廃業・解散も2023年の620件から大幅に増え、722件となった。内訳は「病院」17件、「診療所」587件、「歯科医院」118件。休廃業・解散の増加については「最大の要因は、診療所における経営者の深刻な高齢化にある」と指摘。「後継者不在の診療所が多い現状を踏まえると、廃業となる診療所は年々増え続けることが予想される」としている。