上肢骨折には肩関節から指先までの様々な部位の骨折が含まれ,その治療や起こりやすい合併症も異なる。ここでは上肢骨折の中でも頻度が高く,高齢者の骨粗鬆症に伴う骨脆弱性骨折でもある上腕骨近位部骨折および橈骨遠位端骨折について述べる。
転倒や交通事故などの外傷後,腫脹や疼痛部位の単純X線撮影を行うことで骨折の診断が可能になる。詳細な評価を行う場合はCTが有用である。また転位が激しい骨折や脱臼の場合,周囲の血管損傷や神経損傷を伴う場合もあるので,上肢の麻痺,しびれの有無や,手関節レベルでの橈骨動脈,尺骨動脈の拍動の確認なども併せて行う。血管損傷などが疑われる場合は造影CTが有用で,閉塞や断裂を伴う場合には修復が必要となる。
骨折を含め外傷後の治療の基本はRICE〔rest(安静),icing(冷却),compression(圧迫),elevation(挙上)〕であり,保存加療であっても手術加療であっても受傷後から腫脹や疼痛,熱感が続く間は継続して行う。なお,手術の有無にかかわらず,骨折部を含む関節以外の関節は,拘縮予防,腫脹の軽減目的に積極的に関節可動域訓練を指導する。
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