扁桃炎は小児期に最も多い疾患であり,悪寒・発熱・咽頭痛・嚥下痛を主訴とする。感染初期にはウイルスが原因となり,二次的に細菌が起炎菌となる。急性扁桃炎を繰り返すものを習慣性扁桃炎と呼ぶ。病巣感染症として掌蹠膿疱症,IgA腎症,胸肋鎖骨過形成症などの二次疾患を併発することもある。急性扁桃炎では伝染性単核球症あるいは血液疾患に合併する扁桃炎との鑑別が必要である。伝染性単核球症はEBウイルス感染によるもので,急性扁桃炎に多発頸部リンパ節腫脹,異形リンパ球の出現とリンパ球増多,肝機能障害等を伴うことがある。また年齢が5歳以上で扁桃炎を年に3~4回以上繰り返すもの,扁桃病巣感染症,高度の扁桃肥大などに対しては,扁桃摘出術を選択する。
急性扁桃炎の検出菌では,いわゆるα溶血性連鎖球菌を中心とする常在菌群が40%以上を占めているが,これらはすべてが真の起炎菌とは考えがたく,多くはウイルス感染であったり,マイコプラズマなどの非定形菌が原因微生物であると考えられる。そのほかではA群β溶血性連鎖球菌,黄色ブドウ球菌,肺炎球菌等のグラム陽性菌感染が主体となり,インフルエンザ菌,カタラーリス菌,肺炎桿菌などのグラム陰性菌も起炎菌として検出される。これらの中ではA群β溶血性連鎖球菌が最も重要である1)。前出のEBウイルスによる伝染性単核球症を強く疑う場合は,EBウイルスのVCA抗体,EA抗体,EBNA抗体などを検査する。
ウイルス性あるいは軽症の扁桃炎では対症療法にて寛解を待つが,中等症以上では抗菌薬を使用する。第一選択薬としてペニシリン系薬を用い,伝染性単核球症を疑うときはセフェム系薬を用いる。第二選択薬としてはキノロン系薬を用いる。また,咽頭痛,発熱も伴うことが多いので,解熱消炎鎮痛薬も併用し,整腸薬,うがい液も加える。
残り910文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する