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開業医のスタッフ雇用・求人:どのようなクリニックをめざすのか[ドクターズチャート発!イマドキ開業の実際どうなん?(3)]

No.5261 (2025年02月22日発行) P.54

MM (ドクターズチャート代表)

よいこはこいよ (ドクターズチャート代表)

登録日: 2025-02-19

最終更新日: 2025-02-18

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  • 本連載では,医師限定オンラインサロン「ドクターズチャート」の代表であるMM先生,よいこはこいよ先生に,ドクターズチャート内での話題をもとに,イマドキの開業・開業医について語って頂きます。


    MM:ドクターズチャート代表。開業10年以上の医療法人理事長。Ph.D.。 Xフォロワー2万人。
    Xアカウント: @medpractitioner

    よいこはこいよ:ドクターズチャート代表。医学博士,内科医,クリニック院⻑。Xフォロワー1万人。
    Xアカウント: @practitioner_11

    3800名の開業医/準備医師が参加する情報交換型オンラインサロン
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    市場の変化と媒体の変化

    よいこはこいよ(以下,よいこ) 最近,求人について流れが変わっている感じがするんですけど,どう思いますか?

    MM 確かに媒体もだいぶ変わりましたね。私が開業したのはもう10年以上前ですが,その当時は求人といえば,新聞の折り込みチラシが主流でした。それを週に1度出すだけで履歴書が20〜30通は届きました。労働人口も多かったのでクリニック側が応募者を選ぶような状況でしたね。

    よいこ 10年くらい前までは,紙とネットで応募の質や量はあまり変わりませんでしたが,どちらもここ数年で急激に応募が減りましたね。特に20歳代,30歳代の労働人口が減少している影響を強く感じます。ネット求人媒体も増えましたが,求人を出せばすぐに応募が来る時代ではなくなりましたよね。

    ――ネット求人が主流になったことで,特に気をつけていることはありますか?

    よいこ ネット求人が主流になる前は,「パートを探している人はこの媒体」「常勤を探している人はあの媒体」といった,メディアの住みわけがありましたが,ネットが主流になってからはその区別が薄れました。今では,どの媒体に出しても求人が一括で検索できるようになっています。

    MM 最近では求人情報がまとめられているサイトも増えてきて,どこに掲載しても検索されるようになっています。逆に言えば,「ここに出せば大丈夫」という媒体がなくなってしまって,困っているというのが現状ですね

    よいこ 今は労働人口が減少し,媒体の数が増え,競争が激化しています。今後,労働市場の変化にどう対応していくかが課題ですね。

    ――実際に,ここ数年の応募状況で気になる点などはありますか?

    MM 受付スタッフは,パート募集だと全然応募がなくて,常勤募集にしないと応募すら来ないという傾向が,この5年くらいでますます強くなっている印象です。最低賃金が上がってきていることもありますし,完全に売り手市場になってきている状況です。他業種が常勤で割と高い給料で募集しているのに対して,昔ながらの感覚で休みが多く給料も低いパートを募集しても,誰も見向きもしてくれません。結局,仕事内容はほとんど変わらないのに,常勤として雇いますというふうに募集しないと,エントリーすらないんです。業務内容自体は変わっていないので,この傾向はどんどん強くなっていくんじゃないかと思います。

    よいこ 看護師に関しては,他業種に流れることはないんですが,時代の流れに乗って働きやすい職場に移っていく傾向がありますね。たとえば,以前は病院が新しい看護体制を導入して,常勤の看護師を大々的に募集した時期がありました。そのときは,町のクリニックから看護師さんが一気にいなくなって,みんな病院勤務に移っていきました。その後は,訪問看護ステーションが新たに増えてきて,今度はそこに看護師さんが流れるようになりました。訪問看護は働く時間の自由度が高く,待遇も悪くないので,そちらに移る人が多いです。看護師は資格を持った職業なので,受付スタッフとは違って,特定の場所にとどまるということはあまりなく,その時代ごとの働きやすい環境に移っていくというのが現状ですね

    時給と雇用条件:他業種との取り合いの時代

    よいこ 求人募集で他のクリニックと差をつけなきゃいけないのは当然なんですが,差別化を図ろうとしたら,やっぱり時給や雇用条件が重要になってくるんです。紙媒体の時代は文字数も限られていて,最小限の情報しか載せられなかったんですが,今は電子媒体で求人条件や福利厚生を詳しく載せれば載せるほど,応募者が集まりやすくなっています。時給は,かつては近隣のクリニックの求人を見て少し上乗せするぐらいの戦略でしたが,人口が減少した現在では,クリニック同士ではなく,スーパーなど他業種との取り合いになっています。だから,他業種に負けない時給にしないといけないというのが最近の流れですね。

    MM 求人条件について言うと,昔は紙媒体に掲載するだけで,どんな条件でもある程度目に留まっていました。でも,今はネットで「時給いくら以上」という検索条件が使われるので,それ以下の時給だとそもそも検索に引っかからない。クリニックの場合,他業種ほど高い時給を出せないことが多いですけど,ある程度上げておかないと見てもらえないという苦しい状況があります。

    ――なんとなく,医療機関で働くということに特別なイメージもありますが。

    MM クリニックの魅力って,時給だけじゃなくて,やりがいとか医療に関われる喜びがあると思うんですが,電子媒体だと,そういった点が検索の段階で弾かれてしまうことがあるんですよね。そういう意味では,クリニックには電子媒体は合わない部分も感じます。ただ,どうしても労働力のパイは減っていくわけで,競争が激しくなるわけです。

    よいこ 時給以外に何で差別化するかというのも,重要になってきます。これから開業する先生にとっては,たとえば診療時間というのも大きなポイントです。もちろん,患者さんが通いやすい時間に診療することは必要ですが,夕方以降の雇用は難易度が上がります。誰しも9時から17時の仕事を好む傾向があるので,診療時間を柔軟にすることが必要かもしれません。たとえば,毎日19時まで診療するのではなく,17時に上がれる日をつくるなど,働きやすい職場づくりが今後ますます重要になってくる気がしますね。

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