急性喉頭蓋炎は,多くは細菌感染によって生じる喉頭の炎症性疾患のひとつである。急激に呼吸困難,窒息死に陥る可能性があり,耳鼻咽喉科領域において緊急を要する疾患のひとつである。耳鼻咽喉科領域の医療事故の判例に本疾患による死亡例が散見されることからも適切に対応することが要求される。
咽頭痛,嚥下痛,流涎,嚥下困難,発声障害,呼吸困難,発熱等がみられる。激しい咽頭痛,嚥下痛が急激に進行する。発声障害はくぐもった声で,喉の奥に何かを詰め込んだように聞こえる含み声がみられる。呼吸困難は吸気性喘鳴,起坐呼吸がみられる。患者の体位により程度が変わる傾向があり,仰臥位で増悪するのが特徴である。
間接喉頭鏡検査,喉頭ファイバースコピーにて喉頭蓋の発赤・腫脹が観察され,披裂喉頭蓋ヒダ,披裂部,仮声帯に波及することもある。喉頭に比べて咽頭は所見に乏しい。喉頭を観察できない場合は頸部側面X線撮影により腫脹した喉頭蓋の陰影から診断できることもある。下極型扁桃周囲膿瘍で急性喉頭蓋炎の所見を伴うこともある。
CRP上昇,好中球優位の白血球数増加がみられる。
急激に呼吸困難,窒息死に陥る可能性があるため,入院治療を原則とする。重症例に対しては気道確保を優先する。薬物療法として抗菌薬,ステロイドの点滴を行う。疼痛に対しては解熱鎮痛薬を適宜使用する。
使用する抗菌薬はアンピシリン(ABPC)などのペニシリン系抗菌薬,広域スペクトルを有するセフェム系抗菌薬を用いる。
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