在宅で療養する高齢者は,加齢とともに複数の合併症を持つ場合が増えてくる。その結果,多くの医薬品を併用する,いわゆる多剤併用となり,同じ効果(あるいは類似)の医薬品の重複投与や薬物間相互作用のリスクが問題となるケースがある。また,視覚機能や聴覚機能の低下,嚥下機能の障害などにより,服薬の自己管理や服薬自体に支援が必要になってくることも多い。一方,加齢による腎機能・肝機能の低下により医薬品の体内動態に変動が起こることも考えられる。こうした生理機能の個人差に対応した処方,調剤,服薬の管理を適切に行うには,薬剤師の果たす役割が大きい。また在宅医療において多職種連携は欠かせないが,特に,介護支援専門員が行うサービス担当者会議や,退院時に行うカンファレンスには薬剤師も参加の上,在宅医療における服薬状況の情報把握と薬物療法の方針について話し合う必要がある。薬剤師が関与することにより,在宅医療での薬に関する問題点がスムーズに解決できる可能性がある。
在宅医療に限らず高齢者は,加齢とともに複数の疾患を合併する確率が高くなる。それに伴い,服用する医薬品の数も多くなる傾向にある。また,薬の数が増えると,重複投与や相互作用のリスクに加え,飲み残し・飲み忘れの危険性が高まることがわかっている。さらに,視力の低下や嚥下障害等により薬の管理や服薬に対する支援が必要なケースが増えている。家族が患者本人に代わって医薬品の管理を行うことができればよいのだが,近年,1人暮らし高齢者世帯が増加し,それも難しい状況になっている。
高齢者は,加齢に伴う腎機能・肝機能などの代謝機能の低下や筋肉量減少,体脂肪率の上昇などの身体成分組成の変化に伴い,薬物の体内動態に影響が出る。したがって,これらの影響を考慮した処方を行うことが必要である。また,飲み忘れや飲み残しの防止や,嚥下困難者用の調剤上の工夫などは,薬剤師の職能が発揮される分野である。
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