株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

細菌性髄膜炎(成人)[私の治療]

No.5264 (2025年03月15日発行) P.46

宮本翔平 (国保旭中央病院総合診療内科医長)

塩尻俊明 (国保旭中央病院副院長)

登録日: 2025-03-15

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 細菌性髄膜炎は発熱・意識障害・項部硬直を三徴とする急性感染症であるが,その感度は低く,診断のためには腰椎穿刺が必要である。致死率は20%と高く,救命できても30%に後遺症を認めるなど予後不良な疾患であり,疑われる場合には可能な範囲での検査および可及的速やかな抗菌薬投与が望ましい。

    ▶診断のポイント

    発熱・意識障害・項部硬直の三徴がそろうのは半分以下であり,身体所見から否定することは難しい。ただし,発熱・意識障害・項部硬直・頭痛のうち,2項目以上を満たす場合が95%であり,少しでも鑑別疾患に挙がる場合には腰椎穿刺を行う。Brudzinski徴候やKernig徴候などの髄膜刺激徴候は感度が低く,診断に寄与しない。

    髄液検査では多核球優位の髄液細胞数上昇・髄液蛋白上昇・髄液糖低下がみられる。髄液培養は60%以上で陽性となる。また,髄液乳酸濃度(>3.8mmol/L)や髄液の肺炎球菌抗原は診断に役立つ場合がある。

    血液培養も診断に有用であり,50%以上で陽性となる。血液検査のCRPやプロカルシトニンは,診断に寄与しない。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    起炎菌が同定されるまでは,想定される菌(50歳以下:肺炎球菌・髄膜炎菌,50歳以上:肺炎球菌・髄膜炎菌・リステリア)に対するエンピリックな治療を行う。

    受診から1時間以内に抗菌薬を投与することが推奨されており,腰椎穿刺など検査に時間がかかる場合などは抗菌薬投与を優先する。

    ステロイド投与は,肺炎球菌性髄膜炎に対して有効性が示されている。肺炎球菌性髄膜炎は有病率が高く予後が悪いこと,それ以外の細菌性髄膜炎に対しては有効性は示されていないが少なくとも予後を悪化させないことから,細菌性髄膜炎として治療するのであれば併用する。ただし,頭部外傷や外科手術後の場合,起炎菌の分布も異なり有用性が示されていないため併用は推奨されない。

    残り1,358文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top