6月4~6日に大阪市で開催された日本精神神経学会学術総会の会場で、周囲とは異質な雰囲気を放つ一角があった。ドイツ精神医学精神療法神経学会(DGPPN)による企画展示「ナチ時代の患者と障害者たち」だ。DGPPNがドイツ国内で開催している移動展覧会が、ドイツ大使館と神奈川県立精神医療センターの協力で日本でも実現したものだという。
展示のテーマは、ナチスドイツが優生思想に基づき1939年から41年にかけて行った組織的殺戮「T4作戦」。精神疾患患者、身体・知的障害者に対し、移住、断種、そして“安楽死”を強要したもので、犠牲者は公式記録だけでも7万人に上る。パネルでは、去勢手術や安楽死に関与した医師と犠牲者をそれぞれ写真と名前付きで紹介していた。
DGPPNは2010年の総会で、犠牲者を追悼する式典を行い、会長名で謝罪の弁を述べている。
ただ、展示はナチ時代の医師と精神医療を一方的に断罪するようなトーンではなく、むしろ、誰が命令し、誰が実行し、誰が死んだという事実を淡々と紹介しており、組織的殺戮の恐ろしさを一層際立たせていた。