厚生労働省は9月8日の社会保障審議会介護保険部会に、中山間・人口減少地域におけるサービス提供体制を維持するための方策として、訪問サービス系の介護報酬に利用回数に左右されない月単位の包括評価を導入することや、介護サービスを市町村の委託事業として提供する案などを提示した。
2040年に向けた人口の高齢化や生産年齢人口の減少のスピードが地域によって大きく異なることから、部会では全国を「大都市部」、「一般市等」、「中山間・人口減少地域」に分類した上で、それぞれに応じたサービス提供・支援体制を講じていく方針が固まっている。
厚労省はこの日、サービス提供体制の維持が最も困難になる「中山間・人口減少地域」の対応策として、(1)地域の実情に応じたサービス提供体制の維持のための仕組み、(2)地域の実情に応じた包括的な評価の仕組み、(3)介護サービスを事業として実施する仕組み、(4)地域の事情に応じた既存施設の有効活用―などを提案した。
(1)では市町村の判断で人員・設備基準等を満たしていない事業者のサービス提供を可能とする基準該当サービスの対象を居宅サービス以外にも拡大することや、サービス・事業所間の連携を前提に管理者や専門職の常勤・専従要件などを緩和する案を示した。(2)では訪問系サービスに新たに月単位の定額報酬を導入し、現行の訪問回数に応じた出来高払いとの選択制にすることで、突然のキャンセルや季節変動などが経営に及ぼす影響を軽減することを提案した。
(3)では、地域の事情サービス需要の状況やサービス提供体制の実情に応じ、市町村が介護保険財源を活用した事業として介護サービス提供する仕組みの創設を提案。実際のサービス提供は市町村が委託した事業者が行うが、その対価を利用者ごとの個人払いではなく、事業費(=委託費)として支払うことで、収入の予見性を高め、経営の安定化を図るとした。
(4)では、社会福祉法人や医療法人が所有する施設等のうち、取得や改修の際に国庫補助を受けた施設等について、取得から10年未満に転用または廃止する場合であっても一定の条件を満たせば補助金の国庫返納を不要とする特例の検討を求めた。