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日本の新しい専門医制度が始動した [お茶の水だより]

No.4699 (2014年05月17日発行) P.15

登録日: 2014-05-17

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▼日本の医療界が大きく変わる可能性を包含した、新たなスタートだ。今月、専門医の認定・評価を統一的に行う第三者機関「日本専門医機構」が発足した。1962年の麻酔指導医制度に始まる専門医制度の歴史の中で画期的な改革といえる。
▼なぜ今、専門医制度改革が必要なのか。それは、日本では現在、各学会が運営する専門医制度が統一された基準のないまま乱立していることが背景にある。専門医の広告が2002年から要件を満たせば自由にできるようになり、医療界から「専門医の質が適正に担保されていない」「国民が求めている専門医像との間にギャップがある」との反省が起きた。そして、日本専門医制評価・認定機構や日本学術会議で見直しの議論が始まり、それを引き継いだ厚生労働省の検討会が昨年4月に報告書を取りまとめ、改革の方向性が具体化された。
▼改革のポイントは2つ。1つは、専門医の認定を学会に代わって第三者機関が行うこと、もう1つは、基本領域の専門医に「総合診療専門医」を加えることだ。新制度による専門医の研修は2017年度から始まる。臨床研修修了後に3年間のカリキュラムを研修すると、20年度に新専門医が誕生する。
▼ただ、詳細な制度設計に関しては今後の議論に委ねられた課題も多い。例えば、総合診療専門医の養成数について報告書は「現段階の設定は困難」と明言を避け、第三者機関での検討を求めた。超高齢社会への対応と医師の技量確保とのバランスをどう考えるのか。医療界と国民の間での合意形成が必要な課題だ。このほか、他の専門医から総合診療専門医に移行する際のプログラムや、既存の学会専門医から新専門医への移行時期・基準、専門医の制度的位置づけ、標榜科との関係、医師偏在是正との関係など、医療提供体制や医師の受給需給バランスに大きな影響を及ぼす課題が残されている。
▼日本では長年、各学会が独自に専門医制度を構築してきたため、制度設計の議論では各団体の意見が対立する場面も予想される。その際には、専門医の質を上げ、患者目線の専門医制度を構築するという改革の理念を忘れずに、真摯な意見調整を積み重ねて医療界全体で理念の実現を目指すことが必要だ。医療の進歩は著しく、医師の技量の向上と情報公開に関する社会的要請はますます強まるだろう。医療界はいかにその要請に応えるのか。専門医制度改革の成功が1つの答えになる。

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