▼ついに日本が麻疹の「排除」という快挙を成し遂げた。厚生労働省が3月27日に発表したところによると、世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局は、サーベイランス調査で土着株由来の患者が3年間確認されなかったとして、日本が麻疹の「排除状態」となったと初めて認定した。
▼続々とWHOから排除認定を受けていく先進諸国を横目に、日本は長らく麻疹を排除できないばかりか、他国に患者を「輸出」する国という不名誉にあずかってきた。2007と翌08年には1万人を超える感染者を出す大流行も発生した。しかし予防接種体制の強化が図られ、06年度からはMR混合ワクチンが定期接種に導入、第1期(1歳児)と第2期(就学前)の2回接種となった。08年度から5年間は、未接種者と1回接種者のフォローアップを狙って第3期(中1相当)、第4期(高3相当)の子どもたちが接種対象に追加された。
▼今回の排除状態認定は、ワクチン接種に取り組んだり学校健診などで勧奨を行った現場の医師と、対象者に通知を送ったり助成を出すなどした行政関係者の努力に贈られた勲章といえるだろう。ぜひこれに風疹など他の感染症も続いてほしい。
▼だが、麻疹に関して安心するのは早計だ。麻疹は「根絶」されたわけではなく、フィリピン、中国など近隣諸国では依然として猛威を振るっており、輸入症例も昨年だけでも463例報告されている。21世紀までに排除認定を獲得した米国でも、昨年12月にディズニーランドを感染源とする流行が発生。昨年だけで感染者は例年の3倍に達した。感染拡大の要因の1つとして、米疾病対策センター(CDC)は若年層におけるワクチン接種率の低下を指摘している。
▼日本の麻疹含有ワクチンの接種状況はどうか。第1期、第2期の接種率は全国平均でそれぞれ95.5%(13年度)、93.0%(同)だが、第3期では88.8%(12年度)、第4期では83.2%(同)まで低下する。第4期の接種率下位には大都市圏が並び、5都府県では80%を下回る。07年の流行で20代の成人に感染が広がったことを考えると、今後も未接種者や抗体価が十分でない人へのフォローアップが必要だろう。
▼厚労省の『麻しんに関する特定感染症予防指針』は、2015年度までの排除達成とともに、排除状態の維持を目標に掲げている。もう一方を達成するためにも、医師会、自治体を通じた勧奨など、麻疹ワクチン接種率の一層の向上が求められる。