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局在関連てんかんへの新規抗てんかん薬使用法

No.4763 (2015年08月08日発行) P.58

中里信和 (東北大学大学院医学系研究科てんかん学分野 教授)

登録日: 2015-08-08

最終更新日: 2021-01-05

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【Q】

最近,ガバペンチン,トピラマート,ラモトリギン,レベチラセタムなどの新規抗てんかん薬が導入されています。脳神経外科の分野でも診療を行うことの多い局在関連てんかんに対して使用する場合,従来の抗てんかん薬であるフェニトインや,バルプロ酸,カルバマゼピンなどとの違いや使用法,特に従来の薬剤から新規薬剤に変更する際のポイントについて,東北大学・中里信和先生のご教示をお願いします。
【質問者】
佐藤慎哉:山形大学医学部総合医学教育センター教授

【A】

新規抗てんかん薬には,従来薬にはない優れた特徴があり,てんかん診療の目標「発作ゼロ,副作用ゼロ,将来への不安ゼロ」を達成する上できわめて有用です。
従来の抗てんかん薬のうち,カルバマゼピン,フェニトイン,フェノバルビタールの3剤は肝での酵素誘導が強く,他の併用薬との相互作用の問題があります。生体内酵素の代謝にも影響し,骨粗鬆症,動脈硬化,不妊のリスクを高めます。さらにバルプロ酸,カルバマゼピン,フェニトインは蛋白結合度が高く,これも相互作用の原因となります。また,バルプロ酸の催奇形性は用量依存性に上昇するので,妊娠可能な女性への投与には慎重さが必要です。
レベチラセタムとラモトリギンは新規抗てんかん薬の代表です。適応となる病型スペクトラムが広く,長期服用の副作用も少ないのが特徴です。レベチラセタムは初回投与量でも発作の完全抑制が期待できます。イライラ感や精神症状の悪化例もあるので,投与初期には注意が必要です。ラモトリギンは薬疹が出現しやすく,ごく少量から開始し徐々に増量すべき薬剤ですが,精神症状を悪化させるリスクは低いという利点があります。レベチラセタムとラモトリギンは,ともに妊娠へのリスクが低い薬剤であり,3つのゼロを達成しやすい薬剤として,海外では既に単剤での第一選択薬になりつつあります。
トピラマートも適応スペクトラムが広く,発作抑制作用が強い抗てんかん薬です。ただし用量が増えるにつれ,抑うつ,食欲低下,体重減少が出現しやすく,患者さんの訴えを聞きながら徐々に増量する必要があります。用量依存性に催奇形性のリスクが増え,また尿路系の結石形成や無汗症のリスクもあるため,レベチラセタムやラモトリギンが無効で外科適応もない場合などに慎重に投与すべき薬剤です。ゾニサミドもトピラマートと似た副作用があり,同様に慎重投与が必要です。
ガバペンチンは発作抑制力は低いものの,薬剤相互作用がなく,ブースター的に用いられやすい薬剤です。3分服が必要で,投与初期に眠気が強く出やすい点に注意が必要です。
クロバザムは海外では新薬として位置づけられています。ベンゾジアゼピン系抗てんかん薬としてクロナゼパムと似た作用機序を持ちますが,クロナゼパムより鎮静作用や離脱症状が小さく,てんかん専門医が困ったときに重宝する薬剤です。
最後に強調したいのが,薬剤整理の重要性です。何らかの薬を追加して発作が抑制されたなら,以前の薬は徐々に減量して,できれば中止するのが理想です。

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