株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

セラピストのいない音楽療法【日本音楽療法学会の総会や研修会で評価やアドバイスを受けることを勧める】

No.4788 (2016年01月30日発行) P.63

服部優子 (本町クリニック・服部神経内科副院長)

登録日: 2016-01-30

最終更新日: 2016-10-25

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【Q】

認知症やパーキンソン病の非薬物療法のひとつとして音楽療法の効果が注目されています。期待される治療法と考えますが,そのための専門的な知識を有する専門家や音楽療法士の数は限られているのが現状です。
専門家がいない施設や家庭などにおいて,音楽療法を簡単かつ効果的に行うことは可能でしょうか。また,そのためのお勧めの方法があるでしょうか。この点について,本町クリニック・服部神経内科・服部優子先生のご教示をお願いします。
【質問者】
三輪英人:順天堂大学医学部附属練馬病院脳神経内科 先任准教授

【A】

(1)音楽療法士の現状
音楽療法士はいまだ国家資格ではなく,ご指摘のように,施設や病院での音楽療法士の数は限られています。日本音楽療法学会は,一定のカリキュラムを修了した者を対象に試験を行い認定音楽療法士の資格を与えており,2014年度の時点でその数は約2800人で,理学療法士や作業療法士と比較してその数が圧倒的に少ないのが現状です。
音楽療法士がいない施設で音楽療法を行うには,音楽ができる医療関係者(医師,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士など)がいれば可能であると思いますが,この場合,日本音楽療法学会が行う総会や研修会などに参加して,他者からの評価やアドバイスを受けることをお勧めします。
(2)認知症・パーキンソン病における音楽療法の実際
音楽療法には,歌唱,楽器,音楽を用いた身体活動,鑑賞などがありますが,疾患によって少し手法が異なります。認知症では,軽~中等度であれば,歌唱,楽器,身体活動はいずれも可能です。音楽療法では上手に歌う必要はなく,何を選曲するか,何を目的とするかが大事です。その人にとってなじみのある曲や好きな曲を聞き出してみるのもよいと思います。片手で音が鳴るマラカスや鈴は,認知症でも使用しやすい楽器です。認知症が高度になり歌唱はできなくなってもリズムは残っており,曲を聴きながら体でリズムを取ることができます。また,家族が一緒に参加し,音楽を介してコミュニケーションをとることで,家族にとっても貴重な時間となることがあります。
一方,パーキンソン病では,小声の改善のために,1音1音はっきり歌うことを意識して,大きな声で歌って頂くのがよいと思います。歩行障害は内的リズムの障害が一因とされており,リズムのはっきりした曲に合わせて体の一部を叩く,足踏みをするなど,リズムを正しく刻む訓練が効果的です。パーキンソン病で発声や歩行の改善を目的に行う音楽療法では,言語聴覚士,理学療法士などとともに行うことも効果的です。
最近,認知症やパーキンソン病など神経難病患者に対する音楽療法が,地域のコミュニティや保健所で行われることも多くなり,患者へ周知して頂くのも1つの方法だと思います。なお,音楽療法士を雇用する場合は,日本音楽療法学会のHP上でも募集可能です。当学会には各支部もありますので,代表者を通じて探してもらうのもよいと思います。
最後に,具体的な音楽療法の方法が記載された書籍を参考文献として紹介しますので,ご参照下さい。

【参考】

▼ 山本光利, 編:レジデントのためのパーキンソン病ハンドブック. 中外医学社, 2014.
▼ 日本音楽医療研究会, 監. 呉 東進, 編:医学的音楽療法─基礎と臨床. 北大路書房, 2014.
▼ 羽石英里:パーキンソン病のための歌による発声リハビリテーション. 春秋社, 2011.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top