【Q】
2013年より確定申告の際の必要経費が大幅に改められたと聞いたが,医師の場合は学会の費用(年会費,参加費,旅費)や関連費用(医学雑誌購読料,PC関連費用)が基礎控除額を上回った場合は適用したほうがよいということなのか。 (東京都 S)
【A】
所得税法では,所得はその得る方法によって担税力が異なるため,所得を利子所得から雑所得まで10種類に分類している。
確定申告の際に必要経費が大幅に改められたという質問であるが,必要経費という語が出てくるのは,(1)不動産所得,(2)事業所得,(3)山林所得,(4)雑所得,であって,その範囲は従来と同様である。
ところで,給与所得者の所得は給与所得に該当するが,事業所得(個人事業者の所得)でいうところの必要経費に相当するものとして,給与などの収入金額から控除する「給与所得控除額」と「特定支出控除」がある。平成24(2012)年度税制改正で,給与所得控除額に代わる特定支出控除制度は拡充されており,この改正の適用は,平成25(2013)年分以降の所得税からとしているので,そのことを質問されていると推定する。
特定支出控除適用の判定基準の拡充は,その年中の特定支出の額の合計額が次の[1]または[2]の区分に応じてその定める金額を超える場合に,その超える部分の金額を給与所得控除額に加算することができるとするものである。
[1]その年中の給与等の収入金額が1500万円以下の場合は,その年中の給与所得控除額の2分の1に相当する金額
[2]その年中の給与等の収入金額が1500万円を超える場合は125万円
そして特定支出の範囲の拡充として,(1)通勤費,(2)転任に伴う引越費用,(3)研修費,(4)人の資格を取得するための支出,(5)単身赴任者の往復旅費に次のものが追加されている。
[1]その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者により証明された弁護士,公認会計士,税理士などの資格取得費
[2]次に掲げる支出で65万円を上限に,その者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者により証明されたもの
(1)書籍,定期刊行物その他の図書で職務に関連するもの,および制服,事務服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための支出
(2)交際費,接待費その他の費用で,給与等の支払者の得意先,仕入れ先その他職務に関係のある者に対する接待,供応,贈答その他これらに類する行為のための支出
ご質問の費用を上記要件に当てはめてみると,学会の費用のうち年会費は争点となる可能性があるが,旅費や参加費は研修費に該当する。また,関連費用のうち医学雑誌購読料は[2](1)に該当するが,PC関連費用は内容によっては該当する場合もあると言えよう。
特定支出の適用判定基準を超えた場合は適用したほうがよいと考える。