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心不全・腎不全合併患者に対するCHDF施行の効果とその基準

No.4748 (2015年04月25日発行) P.64

吉田良太朗 (日本医科大学付属病院高度救命救急センター)

横田裕行 (日本医科大学大学院救急医学教室教授日本医科大学付属病院高度救命救急センター部長)

登録日: 2015-04-25

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

心不全と軽度腎不全の合併例で,利尿薬などで利尿がつかず,やむなく持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration:CHDF)を行うと,1割以下の症例で,CHDF開始とともに利尿がついて早期に回復できることを経験します。これについて,どのような病態が考えられますか。また,上記のような病態に対するCHDF施行開始の基準はあるのでしょうか。 (鹿児島県 Y)

【A】

腎機能障害と心機能障害はしばしば併存し,それぞれの病態により,互いに悪影響を及ぼして悪循環に至ります。これは心腎症候群(cardiorenal syndrome:CRS)と呼ばれ,2008年のAcute Dialysis Quality Initiative(ADQI)のコンセンサスカンファランスで,type1~5に分類されました。type1は,急性心不全による急性腎障害(acute kidney injury:AKI)です。質問内容から,CRS type1を主たる病態とする症例に対し,CHDFを導入したと推察します。
CRS type1の病態は交感神経系の亢進,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系およびアルギニン・バソプレシンの分泌亢進から成る神経内分泌の異常と血行動態の異常から説明できます。
血行動態異常からAKIをきたす機序については,心拍出量が低下しているケースでは腎灌流圧の低下から腎機能の低下をきたします。一方,心係数(cardiac index:CI)は腎機能障害の進行と相関がなく,中心静脈圧(central venous pres-sure:CVP)の上昇とよく相関すると報告されています。つまり,心拍出量が維持されているケースでも,左房圧の上昇=腎静脈圧の上昇により腎うっ血をきたし,腎灌流圧(平均動脈圧と腎静脈圧の差)が低下することで糸球体濾過量(glomer-ular filtration rate:GFR)が低下すると考えられています。
以上から,特に過剰な体液量による腎うっ血から腎機能障害が進行した症例については,体液量の是正により,腎機能の改善,ひいては自尿が得られるようになることが期待されます。
体液量過剰状態にもかかわらず,利尿薬に反応が得られない場合,血液浄化療法による除水を考慮します。近年,急性心不全に対して限外濾過による除水と利尿薬使用の効果を比較し,限外濾過が安全かつより有効なことが報告されています。
CHDFの導入基準については,心機能の低下が著しく,血圧の維持が困難なケースで考慮すべきと考えます。急性心不全においても炎症性サイトカインの関与が指摘されており,CHDFによるサイトカイン除去が与える影響も考えられますが,これを支持する十分なエビデンスはありません。

【参考】

▼ Mullens W, et al:J Am Coll Cardiol. 2009;53 (7):589-96.
▼ Costanzo MR, et al:J Card Fail. 2010;16(4): 277-84.
▼ Ahmed MS, et al:Clin Nephrol. 2010;74(4):245-57.

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