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亡き親が連帯保証人となっている債務を免れたいのですが…

No.4774 (2015年10月24日発行) P.66

澤野順彦 (弁護士・不動産鑑定士)

登録日: 2015-10-24

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

被相続人(父)が連帯保証人になっている可能性がある場合,相続人(妻,子ども3人)はどういう手続きをすれば連帯保証の債務を免れるのでしょうか。相続の際,実際に連帯保証の債務があるかないかわからない時点で限定承認はできますか。また1人の子が相続放棄し残りの者が限定承認しても問題はありませんか。限定承認にデメリットはありますか。 (神奈川県 I)

【A】

被相続人が第三者の連帯保証人となっている場合には,被相続人の連帯保証人としての地位・責任(連帯保証債務)は,他の相続財産(債務も含まれる)とともに相続人が当然に承継するのが原則です。
しかし,相続人が相続財産の相続を望まないときは,相続を放棄する,または相続財産の限度においてのみ債務および遺贈を弁済する旨の限定承認をすることができます。したがって,被相続人の連帯保証債務を免れるには,相続の放棄をするか,限定承認をすればよいことになります。
相続の放棄は,相続人が自己のために相続の開始を知ったときから3カ月以内(以下「熟慮期間」という)に,家庭裁判所に申述して行わなければなりません(民法第938条,第915条第1項)。相続の放棄は,相続人が複数いる場合でも,各相続人が単独で行うことができます。相続の放棄をした者は,その相続に関して初めから相続人とならなかったとみなされるため(民法第939条),被相続人の連帯保証債務も承継しないことになります。
これに対し限定承認は,連帯保証債務を相続財産の限度でなら承継してもよいという場合の手続きです。限定承認も相続人が自己のために相続の開始を知ったとき(連帯保証債務の存在を知ったとき)から3カ月以内に,相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し,限定承認をする旨を申述して行わなければなりません(民法第922条,第915条第1項,第924条)。限定承認は,相続人が複数いるときは,共同相続人の全員が共同して行わなければなりません(民法第923条)。
設問のケースでは連帯保証債務の存否が不明のようであり,理論上は連帯保証債務が明らかになったとき(そのときから3カ月以内)に限定承認の手続をすればよさそうですが,それまでの間に相続財産の全部または一部を処分したり,費消した場合には単純承認〔無限に被相続人の権利義務を承継(民法第920,第921条)〕したとされることも考えられるので,まずは連帯保証債務の存否等相続財産の調査を十分に行う必要があります。この調査に時間を要する場合は,あらかじめ家庭裁判所に熟慮期間の伸長を求め(民法第915条第1項ただし書),その旨の審判を受けておくとよいでしょう〔家事事件手続法別表第1(89),第201条〕。
なお,共同相続人のうちの1人が相続放棄をし,残りの相続人が限定承認(ただし全員が共同)できることは前述の通りですが,限定承認後の財産の管理や手続きについては民法に詳細に定められているので(民法第924~937条。この点が事実上のデメリットになる),限定承認の申述に際し,家庭裁判所で確認するとよいでしょう。

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