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眉毛を安全に染める方法はある? 【基本的に危険を伴うため,マスカラなどを利用するほうが好ましい】

No.4793 (2016年03月05日発行) P.64

関東裕美 (東邦大学医学部皮膚科教授)

登録日: 2016-03-05

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

眉毛を毛髪用の染毛剤で染めてかぶれて来院する人が多いのですが、眉毛を安全に染める方法を教えて下さい。 (石川県 S)

【A】

眉毛を安全に染める方法といっても,眉毛用の染毛剤があるわけではありませんので難しいことです。そもそも,毛の量も質も違い,頭皮と眉毛周囲皮膚の性状も違うわけですから頭髪用製品で眉毛を染めて安全なわけはありません。ヘアカラーやヘアブリーチが目に入ると激しい痛みを生じ,場合によっては目の損傷,角膜の炎症などが起こることがあり大変危険であることは,日本ヘアカラー工業会からも注意勧告されています。
頭髪と眉毛の色調の違いに違和感がある人が色の調整をするときには,眉毛を脱色してしまう眉毛用ブリーチ剤が使われることが多いようです。美容室で染めてくれる場合もあるようですが,最近は眉毛サロンとして眉毛カット,睫毛エクステンションやカール専門のサロンも各地で増えています。時にはアートメイクで眉毛刺青をしている方もいらっしゃいますが,異物刺入によるサルコイド反応を生じることが知られ(文献1),実施時の局所麻酔薬によりアレルギー症状を起こした症例も報告されています(文献2)。
観血的処置であるアートメイクは,日本では合法的に可能とされる施設は限られているはずですが,美容施術目的で韓国や台湾を旅行したときに,簡単に実施することが可能です。また,小規模サロンで実施する方も多いようで,筆者自身も眉毛アートメイクによる皮膚障害を日常診療で時折経験します。
若年から高年齢層まで男女にかかわらずヘアカラー消費が高まり,染毛剤による被害届も多くみられるようになっている昨今です。2015年10月に,染毛剤アレルギーの周知目的で消費者安全調査委員会から毛染めによる皮膚障害についての調査報告書が出されました。使用頻度が高くなると,種々の皮膚障害が出るのは当然ですが,目周囲の皮膚は最も薄く,化学物質が経皮吸収されやすい場所です。眉毛用ブリーチ剤の使用についても,頭皮用染毛剤と同様に使用前パッチテストの勧めと,ヒリツキ感があれば使用しないようにと注意勧告がされています。
サロンで実施するほうが眉毛周囲の皮膚に製品が付着しないように使用できますから,自分で実施するよりは皮膚障害を回避できるでしょう。ただし,染毛剤と同様に個人の皮膚状況により皮膚症状が起こる可能性はあり,必ずしも安全な製品とは言えません。冬季乾燥時期には,洗顔過剰で目周囲に皮膚荒れをきたす患者が多くみられます。バリア膜欠如皮膚では容易に刺激を感じますから,脱色剤による刺激性接触皮膚炎を起こしやすくなります。最も安全な方法としては,メイクのたびに眉毛マスカラを使用して眉毛の色塗りをするのがよいと思っています。

【文献】


1) 近藤佐知子, 他:皮病診療. 2013;35(2):193-6.
2) 原田昭一郎, 他:皮病診療. 2000;22(12):1149-52.

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