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特別養護老人施設でインフルエンザが発生した場合の対応範囲は?

No.4794 (2016年03月12日発行) P.58

北川雄一 (国立長寿医療研究センター医療安全推進部 感染管理室室長)

登録日: 2016-03-12

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

特別養護老人施設でインフルエンザが1人発生した場合の予防内服の範囲,隔離などの対応について教えて下さい。 (和歌山県 T)

【A】

現在,予防投薬は,早期から積極的に行う方向になっています。予防投薬が可能な抗インフルエンザ薬には,オセルタミビル(内服・1日2回5日間),ザナミビル(吸入・1日2回5日間),ラニナミビル(吸入・単回)がありますが,いずれも保険適用にならないこと(自費)には留意しておく必要があります。特別養護老人ホームのような高齢者施設では,そこが高齢者の生活の場であることから,利用者同士が食事やレクリエーションの際など接触する機会が通常の医療機関以上に多いと思われ,そのため,広範囲に予防投薬を行うことが必要になってくると考えられます。
具体的には,当該患者の部屋配置や施設の規模によりますが,施設全体,施設の建物一棟全体,あるいは施設のフロア全体といったように,当該患者の施設内での行動範囲,接触領域を考慮した予防投薬が必要になると思われます。接触時間や処置内容(吸痰など)によっては,担当職員に対する予防投薬が必要になる場合もあります。予防投薬を行う際には,投薬を受ける方の同意を得ておく必要があります。
隔離については,可能であれば行うにこしたことはないと考えます。しかし,通常の高齢者施設では,費用負担などとの関係から,個室隔離などの方法は困難なことが多いのが現状でしょう。そのため多くの場合,多人室であっても,カーテンやパーティションで区切るなどの対策にとどまることが多いと考えられます。
発熱・咳などのインフルエンザ症状のある間は,なるべく個人エリア内にとどまって頂き,エリア外に出ることは必要最小限にして頂くのが望ましいでしょう。もちろん,食堂での食事やレクリエーションへの参加は中止して頂く必要があります。また,身の回りの世話などで,施設職員がエリア内に入る際には,マスクを着用するとともに,前後の手指衛生を行って頂く必要があります。抗インフルエンザ薬の予防投薬あるいは患者配置については,以下の資料なども参考にして下さい。

【参考】

▼ インフルエンザ施設内感染予防の手引き.
[http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/dl/tebiki22.pdf]
▼ 社団法人日本感染症学会提言2012─インフルエンザ病院内感染対策の考え方について─(高齢者施設を含めて).
[http://www.kansensho.or.jp/guidelines/pdf/1208_teigen.pdf]
▼ 長寿医療研究開発費 平成25年度総括研究報告「高齢者におけるインフルエンザ, 新興・再興感染症の感染管理および治療に関する研究(25-10)」.
[http://www.ncgg.go.jp/ncgg-kenkyu/documents/25/25xx-10.pdf]

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