【Q】
紫外線の害は広く知られていますが,紫外線の健康への利点はビタミンDの合成以外にわかっているのでしょうか。 (大阪府 I)
【A】
紫外線には,波長の長いほうから,長波長紫外線(UVA),中波長紫外線(UVB),短波長紫外線(UVC)があり,地上に届いているのは,UVAとUVBです。UVAは,一次黒化という色素沈着を起こしますが,UVBは,紅斑反応(赤くなる)を起こして,二次黒化として色素沈着を起こします。この紅斑反応と色素沈着が,日焼けと言われているものです。
さて,紫外線の利点として,以前から紫外線療法として,難治性皮膚疾患の治療に用いられてきたことがあります。長年,UVBやPUVA(ソラレンとUVA)を用いてきましたが,治療中の紅斑反応が強く,また,発癌の可能性があることから,日本でも2002年から,ナローバンドUVBと言われる311nm付近の紫外線放射を持つランプが治療に用いられるようになりました。これは乾癬,掌蹠膿疱症,尋常性白斑,菌状息肉症,慢性苔癬状粃糠疹,類乾癬,アトピー性皮膚炎に対して有効です。308nmエキシマライト,ナローバンドUVBでの340点の算定が可能となっています(平成27年12月現在)。
この作用としては,(1)病因となる細胞のアポトーシスと(2)制御性T細胞の誘導(免疫抑制)が,基本となる2つの作用機序となります。制御性T細胞は,アレルギー免疫疾患に関わるT細胞を抑制することが知られ,特に乾癬の病因となるTh
17細胞も抑制します。どの波長が最も制御性T細胞を誘導するのかについてはまだ明らかにはなっていませんが,ビタミンD3を誘導するのは,UVBでも短波長側で,免疫抑制に関わる制御性T細胞は,300~310nmで誘導されることが推定されています(文献1)。そのほかにも,バリア機能に関わるフィラグリンの誘導や,抗菌ペプチドの誘導も,紫外線でみられますが,それぞれに波長特性があるようです。
UV-LEDが登場し,いよいよ波長ごとの特性を生かした紫外線療法が登場してくると思われますが,太陽から降り注ぐ,紫外線全体では,皮膚癌や光老化などの悪い部分(害)を考えたほうがよいと思います。しかし,紫外線を波長ごとに考えた場合,良いところがあることは間違いないことだと思います。
1) 森田明理:臨免疫・アレルギー科. 2015;64(3):261-5.