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呼吸器外科領域での3DCT・ 3Dプリンターの利用法

No.4729 (2014年12月13日発行) P.49

秋葉直志 (東京慈恵会医科大学附属柏病院副院長)

登録日: 2014-12-13

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

近年,呼吸器外科の領域では,手術の画像支援として3DCTが多用されていますが,3DCTの呼吸器外科領域での使い方や有用性,将来的な展望について,東京慈恵会医科大学附属柏病院・秋葉直志先生のご教示を。
【質問者】
清水公裕:群馬大学医学部附属病院呼吸器外科(2)講師

【A】

胸腔鏡下手術が急速な広まりをみせています。胸腔鏡下手術は拡大した視野で細部を観察しながら手術を行える利点がある一方,全体像の把握が難しく,通常は術野を2次元モニターで観察しなくてはなりません。慣れないと,患者さんのバリエーションに気づかないことや自分が手術操作を行っている部位を取り違える可能性もあります。しかし,手術前に患者さんの詳細な解剖学的情報を把握できていれば,安心して手術を行うことができます。
CT検査では,水平断だけでなく冠状断や矢状断を用いて気管支と肺動静脈の走行を確認することにより,患者さんのバリエーションの存在を把握することができます。しかし,臓器は立体であるため,2次元CT画像から頭の中で3D画像を組み立てなくてはなりません。一方,3DCTは,CTのワークステーションやソフトを用いて3D画像を作成することができます。この場合,上下・左右・前後関係だけでなく,その各々の距離感も同時に表現されますので,頭の中で考えているよりもはるかに具体的な3次元局所解剖を目にすることができます(文献1,2)。
また,肺区域切除を行う機会が増加しています。区域切除のときは,切除区域肺に流入する動脈を切除し,必要な動脈は残さなくてはなりません。区域や亜区域間静脈も処理すべきかどうかを判断することが必要です。病変と気管支,肺動静脈を表現した3DCTはこれらの関係を明らかにしてくれます。
将来展望としては,ハードやソフトの進歩により3DCTが容易に得られる環境が整うでしょう。それ以外に,当院では肺や縦隔に対して,3Dプリンターを用いた3D立体モデルの研究を行っています(文献3,4)。
立体モデルを作成すると,これまでの3DCTですら単なる立体感のある平面像にすぎないと実感させられます。立体モデルは奥行きの距離感に優れているからです。これからの課題として,樹脂の色の増加,塑性変形や弾性変形する樹脂の開発が挙げられます。これらが進むと,さらに発展する可能性があります。

【文献】


1) Akiba T, et al:Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2009; 57(7):335-7.
2) Akiba T, et al:Ann Thorac Surg. 2013;95(4):1227 -30.
3) Akiba T, et al:Ann Thorac Cardiovasc Surg. 2013; Nov 8[Epub ahead of print]
4) Akiba T, et al:Ann Thorac Cardiovasc Surg. 2014; Mar 15[Epub ahead of print]

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