株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

レビー小体型認知症の幻視に対する治療

No.4729 (2014年12月13日発行) P.51

小阪憲司 (横浜市立大学名誉教授)

登録日: 2014-12-13

最終更新日: 2016-10-18

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【Q】

レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB)でしばしばみられる症状に,幻視があります。コリンエステラーゼ阻害薬で消失することも稀にありますが,多くの場合,各種の薬物治療を試みても満足のいく効果が得られません。実践されている段階的な薬物治療などについて,横浜市立大学名誉教授・小阪憲司先生のご教示をお願いします。
【質問者】
朝田 隆:筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学教授

【A】

DLBの幻視に対する治療ですが,ファーストチョイスは,認知障害への効果も行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)への効果も期待できるコリンエステラーゼ阻害薬です。特に,ドネペジルについては,我々の臨床治験(文献1,2)でもその効果が確認されています。そのほかに,ガランタミンやリバスチグミンについても効果があるという報告があります。また,NMDA(N-methyl-D-aspartate)受容体拮抗薬であるメマンチンの効果も報告されています。しかし,ご指摘のように,これらには限界があることは確かです。
その際には,セカンドチョイスとして,抑肝散または抑肝散加陳皮半夏をお勧めします。その効果についても私たちの臨床治験(文献3)で確認されています。これらは,副作用も少なく,飲みにくさはありますが,高齢者には「良薬は口に苦しと言いますから,試みて下さい」と話すと,割合服用してくれます。しかし,これらでも効果が得られないことも少なくありません。
そこで,サードチョイスとして,少量の非定型抗精神病薬を十分な説明と同意のもとに使用します。DLBでは,抗精神病薬への過敏性がしばしばあるので,ごく少量から始めます。DLB国際ワークショップでは,セロクエルRを推奨していますが,より即効性を期待したい場合には,リスパダールRのごく少量を使用します。
そのほかの非定型抗精神病薬でもかまいませんが,肝心なことは,これらはできるだけ使用しないように心がけることです。そして使用する場合には,半錠から始め,少しずつ増加しますが,1~2錠以上は使用しないほうが無難です。
それでも効果があまりない場合もあります。その際には,むやみに増量するのではなく,薬物療法とともに,家族および本人への指導も重要です。幻視は必ずしも消さなくてもよいということを理解することが必要です。それがあっても,本人が不安を感じなければよいという心がけが大切です。
「ああ,自分だけにしか見えないんだ」ということが理解でき,見えても特に害はないことがわかるだけでも,不安はなくなり,幻視が気にならなくなることもよくありますので,幻視をなくすことばかりに気をとられないことも大切です。

【文献】


1) Mori E, et al:Ann Neurol. 2012;72(1):41-52.
2) Ikeda M, et al:Dement Geriatr Cogn Disord. 2013;36(3-4):229-41.
3) Iwasaki K, et al:Psychogeriatrics. 2012;12(4): 235-41.

【参考】

▼ 小阪憲司, 他:精神医学. 2014;56(3):191-7.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top