全世界で用いられている薬の大部分は,日本,米国およびEUの三極で開発されたものである。しかし,薬の承認申請に必要な規制は各極で異なるため,ある地域で承認された薬でも他の地域で承認を得るためには,その地域の規制に基づいて臨床試験を行う必要があった。このため,不必要な臨床試験を繰り返すことになりかねず,優れた薬を迅速に患者に供給することができない恐れがある。この状況を打開するために,日・米・EUの規制当局および製薬企業を正式メンバーとするInternational Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use(ICH)が組織された。
ICHでは,より優れた薬を各極の患者に迅速に供給することを目的として各種のガイドラインを策定した(文献1)。これらは,各極で行われる臨床試験データを互いに受け入れるために必要となる,データの品質保証および共有化をめざしたものである。
1997年以来,わが国では,医薬品の臨床試験実施の基準(新GCP)に基づいて承認申請のための臨床試験(治験)が行われているが,ICHの策定したGCP(ICH-GCP)と内容が若干異なる。したがって,わが国で行われた臨床試験結果を米国やEUの規制当局に承認申請する際には,ICH-GCPに準拠した臨床試験を実施する必要がある。
1) 内田英二:臨床薬理学. 第3版. 中野重行, 他 編. 医学書院, 2011, p26-30.