①ダビガトラン
②リバーロキサバン
③エドキサバン
④アピキサバン
わが国ではワルファリンが1962年に承認され,唯一の経口抗凝固薬としてほぼ半世紀使用されてきた。ワルファリンはビタミンK合成を阻害し,ビタミンK依存性の凝固系経路にいわば“間接”的に拮抗することで抗凝固作用を発揮する。
これに対し,10年前に登場した直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulants:DOAC)はその名の通り“直接”トロンビンや活性化第Xa因子に拮抗作用を発揮する。
日本では2011年以降,4種類のDOACが承認されている(直接トロンビン阻害薬であるダビガトラン,および活性化第Xa因子阻害薬であるリバーロキサバン,アピキサバン,エドキサバン)。いずれもワルファリンと比較し特に安全性の面で優れるとされ,広く使用されるに至っている。
それぞれのDOACには個別の特徴があり,登場から10年以上が経過したことで,様々なエビデンスも蓄積されつつある。本稿ではこれらの使い分けについて,主に心房細動を標的疾患として,その概説を行う。
心房細動や静脈血栓塞栓症を有する患者では,リスク評価を行った上での抗凝固療法の使用が推奨されている。その際にDOACの有利な点としては,以下のようなところが挙げられる。
反対に不利な点としては,以下のようなところであろうか。
※このほか,DOACは大出血時の対策が確立されていないことが,従来,デメリットとして挙げられていたが(ワルファリンではビタミンKでその作用を拮抗することができる),現在はすべてのDOACに対する特異的中和薬が承認され,使用可能になっている。
DOACとワルファリンを比較した各薬剤の大規模ランダム化比較試験(RCT)からは,総じて,DOACのほうが安全性に優れ,特に頭蓋内出血の発生率を低く抑えることも知られている。適応がある症例ではDOACのメリットが高いと考えられ,たとえば,わが国の心房細動治療に関する最新の診療ガイドライン1)でも,「DOACを使用可能な患者で新規に抗凝固療法を開始する際にはワルファリンよりもDOACを用いる」ことが推奨されている。
各DOACの薬効動態に関する特徴を表1 2)に記す。最も重要な項目は生物学的利用率(バイオアベイラビリティ)と腎排泄率と思われるが,各薬剤ともこの2項目を考慮した投与間隔,ならびに腎機能の閾値の設定がなされており,DOACを実臨床の場で使用する際には,特に腎機能に応じた用量の調整や中止を十全に考慮する必要がある。
また,DOACはP糖蛋白/CYP3A4が代謝に関わっており,P糖蛋白/CYP3A4を阻害する薬剤の併用により血中濃度上昇をもたらす可能性があることも注意が必要である(逆にP糖蛋白/CYP3A4を誘導する薬剤の併用では,血中濃度を低下させ抗凝固作用を減弱させる可能性がある)。
次項の「2 各DOACのRCTの結果」では,RCTそのものの結果とともに,上記2点について各RCTでどのような配慮がなされていたか,みていきたい。