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治療抵抗性統合失調症治療薬クロザピン

No.4698 (2014年05月10日発行) P.59

大森哲郎 (徳島大学精神科神経科教授)

登録日: 2014-05-10

最終更新日: 2016-10-26

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2009年に日本へ導入された古くて新しい統合失調症治療薬である。古くてというのは,この薬物の歴史が1960年代にまでさかのぼるからである。抗精神病薬に共通の副作用である錐体外路症状を例外的に出さない点が注目され,従来の薬物との対比から非定型抗精神病薬という名称が与えられた。特異な臨床効果も注目されたが,無顆粒球症の出現のため世界各国の発売ないし開発治験は中止され,いったんは表舞台から消えることとなった。しかし,他の抗精神病薬には反応しない治療抵抗性統合失調症の相当数がクロザピンには反応することが1988年に証明されると(文献1),英米を皮切りに治療抵抗性症例に適応を限定して承認され始めた。国内導入は遅れたが,海外同様に症例を限定し,研修を受けた医師と承認を受けた施設で,厳密な血液モニターを必須条件として,2009年に承認された。
承認後の国内諸報告から見ても,従来薬無効の治療抵抗性例や遅発性ジスキネジア,水中毒のための治療不耐性例では有効例が半数前後ある。統合失調症の治療にとってこれは画期的なことである。にもかかわらず発売後4年間の投与例が2000人程度にとどまっているのは,難治例をやむなしとしてきた精神科医療現場に,リスクを伴う煩雑な治療法が浸透するには時間がかかるためであろう。無顆粒球症は1.1%の発症率を示し決して油断はできないが,血液モニターが功を奏し全例回復している(文献2)。

【文献】


1) Kane J, et al:Arch Gen Psychiatry. 1988;45(9):789-96.
2) [http://www.clozaril.jp/m_sideeffect/importance/02.html]

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