前庭機能検査は,これまで温度刺激検査による外側半規管の機能評価が主に行われてきた。近年,前庭誘発筋電位検査(VEMP)やhead impulse test(HIT)の出現により,耳石器や三半規管の詳細な機能評価が可能となり,またラバー負荷検査による前庭機能障害の簡便なスクリーニングが行われるようになった。
VEMPは強大な音響刺激が蝸牛だけでなく耳石器も刺激することを利用した誘発筋電位検査で,頸筋から記録する前庭誘発頸筋電位(cervical VEMP:cVEMP)と,外眼筋から記録する前庭誘発眼筋電位(ocular VEMP:oVEMP)の2種類の記録法がある。cVEMPは主に球形嚢機能を反映し,oVEMPは卵形嚢機能を反映することから,両者を行うことでより詳細な耳石器機能の評価が可能となった。
HITは急速に頭部を動かした時の眼球運動を観察して前庭動眼反射の評価を行う検査である。頭部を回転させる方向によって外側半規管だけでなく,前・後半規管の機能評価も可能である。近年,ビデオによる記録装置も商品化され,定量評価が可能となっている。
ラバー負荷検査は,重心動揺検査の検査台の上にラバーを置いた状態で立位時の体平衡の評価を行う検査であり,簡便に前庭機能障害の有無を判定することが可能である。
これらの新しい検査は臨床上非常に有益であるが,現在はラバー負荷検査しか保険収載されておらず,VEMPやHITについても早期の保険収載が望まれる。