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強度変調放射線治療

No.4710 (2014年08月02日発行) P.60

土屋和彦 (北海道大学病院放射線治療科診療准教授)

登録日: 2014-08-02

最終更新日: 2016-10-26

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現在のがん治療において放射線治療は手術,化学療法と並んで3本柱のひとつを担う治療法に位置づけられている。その特徴として,放射線治療は他の治療と比較し低侵襲な局所治療であり,かつ機能温存が可能な治療法であることが挙げられる。しかし,実際にはがん周囲には正常組織があるため,放射線治療ではがん細胞のみでなくこれら正常組織にも放射線が照射されることとなり,結果として様々な副作用の原因となっている。そして,従来の放射線治療では,照射方向などを工夫しても,がんの近くの正常組織にはがんとほぼ同じ量の放射線を照射せざるをえなかった。
たとえば,頭頸部癌の治療においては腫瘍の近傍にある大唾液腺(耳下腺)にも照射されてしまうため,耳下腺機能の低下による唾液量分泌低下が起こり,結果として放射線治療後に高度な口腔内乾燥が起こり,患者のQOLを著しく損なう原因となっていた。
2000年代に入り照射技術,コンピュータ最適化の進歩により,意図的に照射野内における照射線量に強弱(強度変調)を付けることが可能となった。つまり,がんには十分に放射線を照射しつつ,周囲の正常組織の線量は従来の放射線に比べ減らすことができる照射法(強度変調放射線治療,IMRT)が可能となった。これにより,頭頸部癌患者においては耳下腺機能の温存が可能となり,治療効果は維持しつつ放射線治療後の口腔内乾燥の程度を軽減することが可能となった(文献1)。現在では,頭頸部癌のみならず前立腺癌など様々な腫瘍に対して用いられている。

【文献】


1) Nutting CM, et al:Lancet Oncol. 2011;12(2): 127-36.

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