形成外科で取り扱う頭蓋顎顔面外科手術では術前計画が重要であり,従来,頭部X線規格写真(セファログラム)などを用いた2次元計測に基づくペーパーサージャリーが行われてきた。1980年代後半には3DCTが開発され,病態を3次元的に把握することが可能となり,また,このデータをもとに実物大の立体モデルが作成されるようになった。これは近年話題となっている3Dプリンターを用いた造形技術によるものであり,わが国でも1993年に高度先進医療としての承認を受け,実際の臨床で患者のモデルを作成し,術前に3Dモデルサージャリーを行うことが可能になった。また,この技術は広く普及し,2008年に保険収載(ただし2000点)に至っている。
原材料は当初,光硬化性樹脂で1体作成するには15万円ほど要したが,その後,石膏粉体,発泡スチロールなど比較的安価な材料が出現し,現在では塩を用いた質感も骨に近い,シミュレーションに適したモデルも出現してきている。モデルの最大の利点は実際に手にとって見られるという現実感にあり,患者家族への説明や若手医師,学生の教育においても有用である。
一方,PCの性能亢進も目覚ましく,CTのDICOMデータを医用画像処理編集ソフトウェアにインプットし,3D画像を構築することでPC画面上で3次元画像シミュレーションを行うことができるようになってきている。この技術は現在,先進医療として行われ,3Dモデルと併用して手術計画に用いられている。
▼ 奥本隆行:頭蓋顎顔面外科:最近の進歩. 改訂第2版. 波利井清紀, 監. 克誠堂出版, 2008, p148-58.