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甲状腺分化癌における放射性ヨードアブレーション

No.4752 (2015年05月23日発行) P.48

日比八束 (藤田保健衛生大学内分泌外科准教授)

登録日: 2015-05-23

最終更新日: 2016-10-26

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甲状腺分化癌(乳頭癌,濾胞癌)の甲状腺全摘後は血中サイログロブリン値が俊敏で信頼性の高い腫瘍マーカーとなるが,正常組織が残存するとその精度が低下する。しかし,甲状腺組織を全摘したつもりでも,わずかに甲状腺正常組織が残存することがあり,これを放射性ヨード(131I)の投与により焼灼(放射性ヨードアブレーション)することが欧米では広く行われている。さらに放射性ヨードアブレーションは残存癌細胞への照射により,局所制御率や無病再発率を向上させることが報告されている(文献1)。
一方,わが国で放射性ヨードアブレーションに有効な131I 投与量で治療するには,放射線治療病室に入院する必要があったため,実施可能な施設はかなり少ない状況であった。そこで,2010年11月に厚生労働省医政局指導課長通知が発出され,遠隔転移のない甲状腺分化癌に対する甲状腺全摘術後,30mCiまでの放射性ヨードならば外来での投与が可能になった。
放射性ヨードアブレーションには,前処置としてTSHを上昇させる必要があり,甲状腺全摘術後に補充している甲状腺ホルモン薬の休薬によってそれがなされていたが,甲状腺機能低下症をきたすことがあった。そこで,2012年,遺伝子組み換えヒト型TSH製剤に放射性ヨードアブレーションの前処置としての効能が追加された。
以上のように,わが国でも甲状腺分化癌に対し,甲状腺全摘後に放射性ヨードアブレーションを施行する環境が整ってきている。

【文献】


1) Mazzaferri EL, et al:Am J Med. 1994;97(5):418-28.

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