最近,死因究明の一助として,死後画像診断(au-topsy imaging:Ai)が注目されている。外表の観察ではわからない内因死の場合やご遺族が解剖を望まない場合に,CTやMRIを用いることで遺体内部の所見を得ることができ,死因究明のための1つの有効な手段と言える。古くはX線写真に始まり,現在では法医解剖前に全身CTを撮影しているところもある。
CT画像と解剖所見を比較検討し,解剖所見のみでは正確にとらえられなかった所見として,腐敗によるガス,気胸とそれによる縦隔偏位,粉砕骨折などがあり,CT画像のみでは確認できなかった所見として,表皮剝脱,死斑の色調,気道内の煤,胸骨骨折,歯の損傷などがあると報告されている(文献1)。
また,画像所見を正しく解釈することは容易ではなく,搬送時のCT画像で広範囲に脳内空気塞栓を認めたが原因不明の病死とされ,後の捜査で血管内に空気が注入されていたことが判明した事例が報告されている(文献2)。
一方で,CT画像で頭蓋骨骨折と脳内血腫が疑われたが,解剖所見では過去の頭蓋骨骨折と,脳内血腫によって生じた空胞内の髄液に出血血液が混じった病変であったという報告もある(文献2)。
Aiは有用な方法ではあるが,現時点では解剖所見と比較検討し,正確な死因究明を行っていく必要がある。
1) Thomsen AH, et al:Forensic Sci Int. 2009;183(1-3):87-90.
2) 池田典昭:病理と臨. 2012;30(臨増):130-4.