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ガス器具の不完全燃焼による一酸化炭素中毒死[〈今日使える〉死亡診断書・死体検案書の書き方・考え方〜当直・在宅・事故(9)]

No.5283 (2025年07月26日発行) P.36

監修: 久保真一 (福岡大学名誉教授)

執筆: 木下博之 (科学警察研究所所長)

登録日: 2025-07-28

最終更新日: 2025-07-22

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【症例】

38歳,男性。生来健康で,病気で仕事を休んだことがない。飲食店を経営しており,本日も午前7時すぎに出勤し,開店準備のため1人で仕込み作業を行っていた。前日まで特に体調に異常はなく,当日も普段と変わりなく午前6時30分に自宅を徒歩で出ていた。通常,厨房では換気扇を作動させているが,前日に故障したため,この日は換気扇を作動させずに作業していた。午前11時前に出勤した従業員が,死者が厨房内で倒れているのを発見した。救急隊が現場に到着したときには,既に死後硬直や死斑が出現しており,病院には搬送されなかった。

救急隊から警察に通報があり,現場の見分,死体の検視が行われた。なお,室内にある給湯器は使用中の状態であり,検証を行ったところ,吸気口にほこりがたまっており,不完全燃焼の状態であったことが判明した。また,後日の検証実験で,換気扇を作動させずに給湯器を使用すると,室内の一酸化炭素濃度が上昇し,致死的な濃度に達することが明らかになった。

警察の要請で,警察医(検案医)による死体検案が行われた。死体の外表に損傷はなく,鮮紅色の死斑が著明に出現していた。血液を採取したところ,鮮紅色で,一酸化炭素ヘモグロビン飽和度が82%であった。死体現象,発見時の状況をふまえ,死亡時刻は午前9時頃と判断(推定)した。

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