アレルギー疾患にいったんかかってしまうと,慢性化するため,継続した治療を余儀なくされる。現在,アレルギー疾患の既往がある成人は国民の50%に達する。個々の症例のみではない全体的な対策が必要であろう。
アレルギー疾患を獲得する典型的な過程として知られているのは,小児期におけるアレルギーマーチである。これは優れた小児科医であった馬場実先生の経験則から提唱された概念であるが,その後の研究により,アトピー性皮膚炎からアレルギー性鼻炎,喘息に至る連鎖は統計的に明らかになっている。
皮膚と気道の感作が関連する機序は,アトピー性皮膚炎の悪化が皮膚のブドウ球菌感染を起こしやすくし,皮膚での感染から派生するメディエーターが作用することで,吸入抗原への感作が成立しやすくなるためと考えられており,最初の皮膚疾患を治療安定化すれば,その後のマーチは起きにくくなると予想される。そのため,小児アレルギー医はアトピー性皮膚炎および乳児湿疹のスキンケアを丹念に行うことによって,その後の感作とアレルギー疾患の連鎖を防ぐ試みを始めている。
現代生活で増加する一方であるアレルギー疾患が,こうした介入によって少しでも減少すれば喜ばしい。
▼ 厚生労働省:リウマチ・アレルギー対策委員会報告書.
[http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000 001nes4.html]
▼ Matsumoto K, et al:Allergol Int. 2013;62(3): 291-6.