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降圧薬配合剤の長短

No.4759 (2015年07月11日発行) P.54

長谷川純一 (鳥取大学薬物治療学教授)

登録日: 2015-07-11

最終更新日: 2016-10-26

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半世紀前の降圧薬といえば,サイアザイド系利尿薬とレセルピン,ヒドララジンなどしかなく,高血圧治療においては,その2~3種の配合剤(合剤)などがよく処方されていた。1970~90年代にβ遮断薬,Ca拮抗薬,α1遮断薬,ACE阻害薬,ARBなどが次々と登場すると,上記配合剤の使用頻度が急速に低下した。その後のガイドラインなどでも,単剤の併用が前提となっていた。
ARBのロサルタンに少量のヒドロクロロチアジドを加えた配合剤が2006年に発売されると,同様の降圧薬配合剤が次々と上市され,その組み合わせもARBとサイアザイドのほか,ARBとCa拮抗薬などが配合されている。現在では降圧薬ばかりでなくARBとスタチンなども加わっている。パーキンソン病治療薬レボドパと代謝酵素阻害薬の配合剤,抗菌薬,消化酵素製剤など配合剤がめずらしくない分野もあるが,降圧薬では新鮮に思える。
降圧薬配合剤の上市がブームのようになっている原因に,製薬企業の特許切れに関するジェネリック対策などもあるようだが(文献1),製造,梱包,輸送費なども経済的であろう。患者にとっては単剤よりも低薬価で(文献2),錠剤数も減ることから,服薬アドヒアランスが良くなる可能性など利点がある。ただ,血圧の季節的変動なども考慮すると,投与量の加減など柔軟性に欠ける問題があり,有害な副作用が出た場合の因果関係の推定が複雑になるなどの欠点もある。しかし,もともと副作用の相殺や相乗効果を狙い複数の薬剤を使用することの多い降圧治療であり,配合剤も上手に利用したい。

【文献】


1) 加藤 晃:日本価値創造ERM学会誌. 2010;#2010_01.
2) 厚生労働省保険局長通知:薬価算定の基準について. 保発0210第4号, 平成24年2月10日.

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