昨今,肝疾患の中で比重を増しているのがアルコール性肝炎(ASH)および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。ASHとNASHは成因が異なるもののその病理は酷似しており,進行すると非代償性肝硬変,肝不全に至る。ASH,NASHに対して行われる肝移植は近年増加傾向にあり,わが国では2014年末までにそれぞれ213例,74例が施行されている(文献1)。レシピエントの肝移植後1,5,10年累積生存率はASHで84.2%,78.6%,66.1%,NASHで81.1%,77.6%,58.2%で,短期成績はほかの肝細胞性疾患に比し遜色ないものの,10年累積生存率がC型肝炎と同様やや低い(文献1)。これは肝移植後の再発が原因と考えられる。
ASH,NASHは飲酒やカロリー摂取過多を原因とする生活習慣病である。ASHでは肝移植後の再飲酒が16~49%に認められ,18%がアルコール性肝硬変に進行し(文献2),NASHでは肝移植後25%に再発を認め,18%が肝硬変に進行する(文献3)と報告されている。再発を避けるため,ASHに対する肝移植では,脳死肝移植登録に際して,アルコール依存ではないこと,18カ月以上の禁酒期間を設けること,が必須条件となっている。NASHに対する肝移植後は,グラフト肝に脂肪肝をきたさないようカロリーコントロールが重要である。
1) 日本肝移植研究会:移植. 2015;50(2・3):156-69.
2) Dumortier J, et al:Am J Gastroenterol. 2015;110(8):1160-6.
3) Malik SM, et al:Liver Transpl. 2009;15(12):1843-51.