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切除可能膵癌の術前治療はどうなる?  【今後2~3年で術前治療を行うべきか,行わないべきかが明らかに】

No.4800 (2016年04月23日発行) P.50

海野倫明 (東北大学消化器外科教授)

登録日: 2016-04-23

最終更新日: 2016-10-26

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膵癌はすべての悪性腫瘍の中で最も治療成績の悪いがんとして知られている。早期発見が困難,進行が早い,抗癌剤が効きづらい,という三重苦のようながんである。このように暗黒の世界にあった膵癌治療にも,21世紀を迎えてから少しずつ改善の兆しが見えてきている。
腹腔動脈や上腸間膜動脈などの重要な血管に接触している膵癌は,外科医が頑張って切除しても多くの症例で切除断端が陽性になることから,切除を行う前に化学(放射線)治療を行うことが一般的となった。現在,最も意見が割れているのは,大血管への浸潤がなく切除が容易そうに見える膵癌に対して,従来通りすぐ切除を行うのか,それとも術前化学療法を行ってから切除を行うのか,という点である。術前治療を行っている期間に腫瘍が進行し切除ができなくなる可能性と,術前治療を行うことで腫瘍が縮小し切除率が向上する可能性,どちらがまさっているか,後ろ向き研究で優劣を判断するのは不可能であった。
これを明らかにするために,切除可能膵癌に対する術前ゲムシタビン/S-1治療の有効性と安全性を目的とするランダム化比較試験,PREP-02/JSAP-05試験が行われた。本試験は切除可能膵癌を,手術先行群と術前治療群にランダム化し,有効性と安全性を評価するものである。2013年1月に症例登録を開始し,約3年で360例が登録され,16年1月で登録を終了した。本試験に登録して頂いた患者・家族,および関係各位に,研究代表者として厚く御礼申し上げる。今後2~3年で,術前治療を行うべきか,行わないべきか,が明らかになると思われる。その結果に期待したい。

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