【Q】
ある地方公共団体が市民病院跡地への医療機関誘致において,地元の医師会への加入を公募条件としていましたが,これは独占禁止法に違反しないのでしょうか。 (大阪府 M)
【A】
近年,市町村などの地方公共団体が,閉鎖した公立病院の跡地や施設を利用して病院運営を行う事業者(医療法人など)を募集するケースがみられます。公募条件として,法人格の取得や一定の施設設備の確保を求めることが多く,地方自治体が定める一般競争入札に準じた取り扱いが求められます。事業者間で談合が行われない限り,上記の公募が独占禁止法違反として問題になることはありませんが,応募者の選考にあたって機会均等や公正性,透明性,経済性などの確保が求められます。
一般競争入札の場合,地方公共団体の長は「当該入札を適正かつ合理的に行うため特に必要があると認めるときは」必要な入札参加資格を定めることができるとされています(地方自治法施行令第167条の5第1項,第167条の5の2)。ご質問の事例についても,どのような公募条件を定めて医療機関の誘致を行うかは,地方公共団体の長に一定の裁量が与えられていると解されます。しかし,必要性や合理性が認められない制限は違法となります。
公募条件として地元の医師会への加入を求める理由は,市民病院の跡地を利用する医療機関として地域の医療機関や医師会との連携を確保するためであると考えられます。しかしながら,医師会は任意加入の団体であり,医師会への加入には年会費などの負担が必要となります。地域医療の連携確保は,救急輪番制への協力や地域医療連携室の設置など,ほかの手段によっても実現可能です。地元の医師会への加入は,公募条件として過剰な制約であると解されます。
最近の裁判例では,ある地方公共団体の長が,一般競争入札により発注する工事の入札参加資格を,災害協定を締結した土木建築工事業者に制限したところ,当該災害協定締結要件は一般競争入札を「適正かつ合理的に行うため特に必要がある」とは認められないとして,地方自治法施行令第167条の5の2に反して違法であると判断されています。地元の医師会への加入を公募条件とすることも同様に違法とされる可能性が高いと言えるでしょう。
? 水戸地方裁判所平成26年7月10日判決:判例時報. 2015;2249号:p24.