従来,放射線治療計画における最適化計算は時間と手間を要し,出力される線量分布は作成者の手技に依存してきた。
最適化計算では「オブジェクト関数」が利用される。これは,計算中の線量値と条件としての線量値の2乗残差を臓器ごとに加重し,合算した数値を与える。オブジェクト関数は複雑な構造を有し,最小解は臨床的線量制約を一般には満たさない。これにより,手動の治療計画には,①オブジェクト関数の再定義に,計画者が断続的に占有される,②最適化過程に無駄が多く,計算時間が長くなる,③臨床的な線量制約内で計画者依存性が残る,の3つの問題点があった。
2015年にPHILIPS社よりリリースされたPinnacle3 Auto-Planningは,治療計画の自動化に成功した。これにより,オブジェクト関数は計画機により自動で再定義され,計画者は実質,最適化の開始ボタンを押すのみとなった。また,系統的なオブジェクト関数の変形により,計算時間が短縮されることも魅力である。さらに,臨床的線量制約をおよそ満たした高品質な線量分布(文献1)が出力されており,計画者依存性が極限まで減らされている。
将来的に,Auto-Planningの計算エンジンをほかの計画機にハイブリッドに組み込む可能性も提案されており,治療計画装置のますますの発展が見込まれる。
1) Hazell I, et al:J Appl Clin Med Phys. 2016;17(1):5901.