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双極性障害と創造性やリーダーシップとの関連 【変化が求められる局面で常識を超えた力を発揮し,偉業を達成することがある】

No.4833 (2016年12月10日発行) P.56

仁王進太郎 (東京都済生会中央病院精神科(心療科) 医長)

村井俊哉 (京都大学大学院医学研究科精神神経科教授)

登録日: 2016-12-07

最終更新日: 2016-12-01

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  • 双極性障害の臨床では,社会的地位の高い人や,優秀な人に出会うことがままあります。双極性障害と,創造性や高いIQとの関連が言われることがあるようですが,双極性障害をはじめとした精神の病と,リーダーとしての資質について何か関連がありましたら,ご教示頂けますと幸いです。
    京都大学・村井俊哉先生のご回答をお願い致します。

    【質問者】

    仁王進太郎 東京都済生会中央病院精神科(心療科) 医長


    【回答】

    双極性障害は躁とうつの気分変動を繰り返す精神疾患です。躁状態のときもうつ状態のときも,それぞれ仕事や学業を続けることが困難になり,家庭内生活さえ困難となって,入院加療を必要とすることも少なくありません。したがって,未治療の場合や治療が成功していない場合には,社会的に責任の重い立場に就いてリーダーの役割を果たすことは多くの場合,困難です。

    このような一般論をまず大前提としてふまえた上での話ですが,「双極性障害という精神疾患を持っていること自体がリーダーとしての資質を増強することがある」という興味深い仮説を,米国の精神科医Nassir Ghaemiが提唱しています1)

    Ghaemiが提唱するInverse Law of Sanity(正常・異常反転の法則)という仮説によると,状況に大きな変化がなくルーチン・ワークを続けることが企業や国家にとってプラスになる時期には,精神的に健康であるほうがリーダーとして相応しいのです。そこまでは誰もが納得できるとして,状況の変化が激しくこれまでと同じやり方では組織がうまくいかなくなるような時期には,リーダーに向く資質に「反転」が生じ,むしろ精神疾患を持っていることがリーダーとしての成功につながる場合がある,としている点がこの仮説の斬新なところです。そして,このような「反転の法則」が成り立つ精神疾患は,双極性障害とうつ病である,とGhaemiは言うのです。

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