▶医療の発達により、重篤な疾患を有する新生児の命が助かるようになった。それに伴い、喀痰吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な子ども(医療的ケア児)が増えている。文部科学省の調査によると、特別支援学校と小中学校における医療的ケア児の人数は、2006年度は5901人だったが、14年度には8750人に増加している。
▶しかし、その支援体制は脆弱だ。日本初の障害児保育園を14年に開園した認定NPO法人フローレンスの駒崎弘樹代表によると、現状は「NICU(新生児特定集中治療室)を退院すると地域に行き場がない」。既存の幼稚園や保育園の受け入れはほぼなく、通所施設の数はごくわずか。保護者は仕事を辞めざるをえず、療育と経済的負担がのしかかる。そのため同法人では、障害児を長時間預かり、保護者の就労を支える障害児保育園を開園。現在は都内に2カ所運営しているが、「ニーズが多く、希望者をすべて受け入れられない」という。
▶こうした状況を改善するため、今年6月に公布された改正障害者総合支援法では、医療的ケア児に対する支援を初めて盛り込んだ。自治体に対し、「日常生活を営むために医療を要する障害児が適切な保健、医療、福祉の支援を受けられるよう、関連機関との連絡調整を行うための体制整備に関して必要な措置を講じる」との努力義務を課した。
▶厚生労働省の調査では、医療的ケア児の療育に関する相談先として最も多いのが医療機関の職員で、全体の8割弱を占める。医療技術の発展に伴い、医療的ケア児はますます増えていくだろう。今後医療機関は福祉機関や行政と連携し、救命後の療育に関する技術、知識を共有し、医療的ケア児を支える役割が一層求められている。