第35回日本認知症学会学術集会が1〜3日に都内で開かれ、「実際にどのくらい機能しているのか? 現実的問題は何か?」と題するシンポジウムが2日に開かれた。安部明夫氏(別府市・安部第一医院、写真)は、診療所のもの忘れ外来で看護師を活用し認知症の行動・心理症状(BPSD)に対応する取り組みを紹介した。
安部氏は認知症の疾患特性として、病的な海馬皮質による記憶障害という「症状」と、正常な脳が起こす「反応」であるBPSDの2つの側面があると説明。心の反応であるBPSDは患者の人生が影響しており、大いなる「隙間分野」である認知症への対応はかかりつけ医が担うべきと指摘した。
その上で、認知症で患者家族の一番の愁訴はBPSDであることから、もの忘れ外来で看護師によるBPSDの聞き取り・相談を実施していることを紹介。担当の看護師は事前に安部氏による院内研修を受けた上で家族らと面談し、相談内容や症状、支援の内容などを記載した記録を作成する。看護師の面談を導入した結果、外来がスムーズになり、診療所の総患者数に占める認知症患者の割合は年々増加しているという。
安部氏はもの忘れ外来の課題として診療報酬や時間的制約を挙げた上で、「もの忘れ外来はかかりつけ医の役割に適した外来。curableでなくてもmanageableであればいい」と強調した。