(質問者:石川県 K)
(1)契約以外の責任
レトルト食品に異物が混入していた場合に考えられるのは,まず異物混入食品を食べるなどして被害が生じた場合,消費者に対して製造物責任(製造物責任法第3条)または不法行為責任(民法第709条)としてその損害を賠償する責任です。
しかし製造物責任は,原則的に「販売しただけ」のスーパーにはありません〔例外として,大手スーパーのプライベートブランド(製造物責任法第2条第3項第2号後段)など〕。また,今回のケースでは,健康被害が出ていないのであれば,そもそも製造物責任は問えません(製造物責任法第3条ただし書き)。レトルト食品のような密閉商品では販売店に異物混入についての「過失」があるとは考えにくく,不法行為責任を問うこともできないでしょう。
次に,「人の健康を損なう恐れがある」異物混入食品の販売は,食品衛生法第6条第4号で禁止されており,違反すれば,営業停止などの行政処分(食品衛生法第55条)や懲役などの罰則(食品衛生法第71条)を受ける可能性もあります。ですが,体内を傷つける金属片や,それだけで食中毒を引き起こす異物と違い,一般的に食品工場で使用されるビニールの破片における「健康を損なう恐れ」は少ないため,販売店にこれら食品衛生法上の「ペナルティー」が科せられることはないでしょう。
(2)契約責任
販売店に食品衛生法上の「ペナルティー」がないからといって,何の責任もないわけではありません。消費者と販売店とは売買契約関係にあるので,消費者に対し,売主としての責任(契約責任)があります。
具体的には,今回のような代替性のある工業製品(不特定物)については,一定の性能・品質を備えていない場合,契約上消費者の求めていた商品とは違うので,契約の履行が不完全と評価され(不完全履行,つまり一応の債務履行はあったが民法第415条の「債務の本旨に従った履行」がないということ),販売店は債務不履行責任を負うことになります。
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