熱傷診療を取り巻く環境はここ十数年で大きく変化してきている。『熱傷診療ガイドライン』の初版が2009年に公表されたことにより,わが国における熱傷診療はより標準化され,全国的な診療レベルが向上した。15年には,創傷被覆材や栄養などの項目を加えた第2版が公表された。
重症熱傷の手術においては,超早期手術が推奨され,水圧式ナイフなどの新たなデバイスが使用されるようになった。死体同種皮膚移植が保険収載されるようになり,わが国で初めての再生医療製品である自家培養表皮も広く使用されるようになった。
初期輸液療法においては臨床研究が行われる予定もあり,今まで行われてきた標準的なBaxter法による輸液も,今後変更される可能性がある。
初療時の熱傷診療コース(Advanced Burn Life Support:ABLS)や病院前の熱傷診療コース(Prehospital Burn Evaluation Care:PBEC)といった,熱傷診療に特化したコースも行われるようになってきており,医師のみならず救急救命士への教育も充実してきた。
それぞれは小さな変化であったとしても,確実に治療法は進歩しており,救命率の向上が期待できる。今後は救命率の向上のみならず,機能面や整容面など社会復帰に向け,さらにQOLを向上させるための治療の進歩が求められている。
【参考】
▶ 日本熱傷学会学術委員会, 編:熱傷診療ガイドライン. 改訂第2版. 日本熱傷学会, 2015.
【解説】
1)熊澤憲一,2)武田 啓 1)北里大学救命救急・災害医療センター講師 2)北里大学形成外科・美容外科主任教授