▶15日未明に衆議院本会議で可決・成立した統合型リゾート(IR)推進法。発効が絶望的な環太平洋経済連携協定(TPP)を承認するために、国会会期が延長された時も驚いたが、それがカジノ解禁で終幕するとは予想しなかった。
▶法案審議では与党の公明党を含む多くの議員が、カジノ解禁によるギャンブル依存症増加への懸念を表明。しかし、同法の性格がプログラム法ということもあり、自民党などの議員は「具体的な対策は推進法成立後に整備する『実施法』の中で示す」との答弁に終始し、会期末間際に提出・可決された修正案でも、政府が対策を講じるべき項目に「ギャンブル依存症」と一言付されるにとどまった。
▶カジノを解禁しなくても、日本は「賭博大国」であり、「ギャンブル依存症大国」だ。公営ギャンブルの豊富さに加え、海外の調査では「賭博ゲーム」と定義されるパチンコで遊べる「遊技場」が街に溢れている。厚生労働省研究班の推計では、成人男女のギャンブル依存症有病率は4.8%、人口換算で536万人となり、有病率は海外に比べても高い。
▶法案審議では、こうした「現状」への対策については議論されなかった。しかし、塩崎恭久厚労相が「ギャンブル依存症は治療すべき病気」と答弁し、テレビ等で依存症経験者の話題が取り上げられる機会が増え、対策への関心が高まっている。
▶精神科領域の中でも依存症治療はマイナーで、対象をギャンブルに絞ると専門家はさらに少ない。「実施法」は官僚主導で作成されるとみられ、医療界の意見が反映される余地もあろう。専門家育成に公的支援を求めるなど、医療界はIR推進法成立をギャンブル依存症対策を手厚くする上での好機に転換すべきではないだろうか。