【質問者】
井口浩一 埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター講師
骨盤骨折に対するガーゼパッキングは,もともと肝損傷におけるdamage control surgeryから発展してきたものです。基本原理は,圧迫効果による止血と異物接触による血栓不動化・血栓形成促進効果からなっています。骨盤は後腹膜腔という半閉鎖空間に存在するため,小骨盤腔の奥のほうからガーゼを詰め込むと,骨盤周囲の圧上昇が認められます。私たちは,骨盤ガーゼパッキングを開始した初期に,外腸骨静脈にシースを入れて先端圧を測定していたのですが,ある程度きつめにガーゼを詰め込むと,圧が30mmHgを超えてしまうことがわかりました。つまり,abdominal compartment syndromeの危険水位を超えてしまうわけです。その場合,後腹膜腔にある腎血流の低下なども危惧されますし,ガーゼに直接接触している骨盤腔の組織には,部分的に,さらに過剰な圧がかかっていることが予想されます。
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