本稿では、今後の超高齢・少子社会についての私の事実認識と「客観的」将来予測を3つ述べます。それにより、日本に蔓延している将来に対する悲観論が一面的であることを指摘します。私は、このことは今後の医療・社会保障改革を長期的かつ冷静に見通すための前提・土台になると考えています。
その前に強調したいことは、厚生労働省の医療・社会保障改革の目標年(ゴール)が、最近、2025年から2035~40年に変化しつつあることです。よく知られているように、民主党政権時代にまとめられ、第2次安倍政権も当初は引き継いだ「社会保障・税一体改革」の目標年は2025年でした。
それに対して、厚生労働大臣の私的懇談会は2015年6月にそのものズバリ「保健医療2035提言書」をまとめました。2016年5月(名目は3月)に発表された「地域包括ケア研究会2015年度報告書」は「2040年に向けた地域包括ケアシステムの展望」を述べました。同年7月に発表された厚生労働省「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部の資料「地域包括ケアの深化・地域共生社会の実現」でも「2035年の保健医療システムの構築に向けて」の課題整理がされています。
言うまでもなく、2025年は「団塊の世代」全員が後期高齢者(75歳)になる年です。しかし、日本の人口高齢化・少子化はこの後も続き、2035年には団塊ジュニアが65歳に到達し始め、2040年には彼ら全員が65歳以上になり、しかも死亡者数がピークに達すると推計されています。そのため、私は目標年の延長は妥当だと思います。
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